晴れて気温が上がった。暑くもなく寒くもない、ここちよい一日だった。風が少しあったが。
昨日、歌人・永井陽子氏についてインターネットでいろいろ調べているとき、氏の遺品を集めた企画展を大宮図書館で開いていることを知った。
図書館に電話をして展示内容を聞き、行ってみたいという気持ちになった。手紙類があったら見たいと思ったが、手紙はなく、手書きの原稿が展示されているとのことだった。
お昼前に家を出て、目黒経由で渋谷に出てJR湘南新宿ラインに乗って大宮に向かった。快速電車なので各駅電車よりだいぶ早く着いた。
大宮駅に着いたのがちょうど12時だったので、東口にある高島屋デパートで昼食を食べた。高島屋と言えば二子玉川の高島屋と日本橋の高島屋しか知らなかった。
高島屋の前を駅から遠ざかる方向に歩き、四つ角にあるauショップを右に曲がってまっすぐ7~8分ほど歩いたところに大宮図書館があった。大宮区役所と同じ建物となっている。
半透明の緑を帯びたガラスが外観に使われ、特徴のある美しい建物だ。中に入ると明るく広くゆったりとしていて、視界を遮る壁が少ないのがここちよい。
あとで調べたのだが2020年度の日本建築協会優秀建築選(100選)に選ばれている。外観は絹糸スクリーンと呼ばれているようだ。
図書館2階にある文学資料コーナーで、歌人・永田陽子「うたはふしぎな楽器」の企画展示が行われていた。
べくべからべくべかりべしべきべけれすずかけ並木来る鼓笛隊
という永井氏の短歌を書いた自筆色紙が展示されていた。
愛知県立女子短期大学時代の文芸同好会誌「轍」や、親友とともにつくった同人誌「詩線」の終刊号など、若いころの活動に興味をひかれた。詩や短歌・俳句に興味を持ち、活動していた永井氏の青春時代に思いをはせた。
万年筆で400字詰めの原稿用紙に書いた自筆の短歌もある。1首1首をていねいに鑑賞した。同人誌のための短歌原稿に、万年筆で消そうとした短歌があって、この歌をボツにしたのかと興味がそそられるが、ご本人は他の人に見られたくないものかもしれない。
病気で入院していた頃の自筆原稿には
「枕辺へながれてきたるはなびらをちいさな春のつばさとおもふ」という歌がある。
『モーツアルトの電話帳』という歌集には一編のエッセイが添えられ、そこには東京に来て疲れてしまった永井氏が自宅に電話をして、自らが録音した留守電のメッセージを繰り返し聞いたことが書かれている。メッセージとともにモーツアルトのトルコ行進曲が録音されていて、その曲を聴くためだった。
その時の電話機が展示されていた。永井氏は留守電について短歌を読んでいて、その短歌は悲しい内容だったので、この電話機だと思うとある感慨があった。
いくつかの永井氏の作品や、氏のインタビュー記事を掲載した本などがあったので、図書館でしばらく読んだ。ガラス張りの窓際に細長いテーブルがつくられ、欅の新緑を眺めながら読書ができる。すばらしい環境だ。
いままで利用したなかでいちばんきれいで、ゆったりとしていて居心地がよく、読書には最高の環境である。
帰りは特別快速に乗ることができ、停車駅は大宮、浦和、池袋、新宿、渋谷でびっくりするほど速かった。