昨日は友だちと原美術館に行った

 東京の品川にある原美術館。前から行きたいと思いつつ、行くことがなかったが建物の老巧化が進み、来年、閉館になると知り、昨日訪れた。

 現代美術の展示で知られている美術館なので、現代美術好きの友だちを誘った。先週、電話をかけて友だちを誘い、ネットで予約を入れておいた。

 JR品川駅中央改札を出て、高輪側に階段を降りる。駅前の道を品川プリンスホテルの方に渡り、駅を背にして左側(五反田方面)へ歩いて7~8分のところにある。

 途中、大きなカーブを描くきれいな銀杏並木を歩いた。高輪交番前交差点を左折して道路を渡り、しばらく行くと左手に原美術館がある。

 常緑樹と紅葉した木々が交じりあう素敵な庭を持っている。

 館内は曲線を生かした空間が特徴だ。広いギャラリーと比較的小さな部屋が組み合わされ、個室のような小さめのギャラリーには常設展示品が飾られている。秘密の小部屋的な雰囲気があって楽しい。

 来年の1月11日(月・祝)まで開かれている「光ー呼吸 時をすくう5人」展は広いギャラリーを中心に展示されている。

    5人の現代美術家たちの作品のなかでいちばん印象に残ったのは、佐藤雅晴氏の「東京尾行」Tokyo Traceである。

 氏は昨年春の40代半ばで早世された。実写映像に実写を忠実にトレースしたアニメを一部だけ加えて、現実と虚構の違いがかえって真剣に見ると言う視覚体験をもたらす。

 いつかの日の国会議事堂前の実写とアニメの融合がすごくおもしろかった。国会議事堂や正門、その前に止まるパトカーはアニメで、正門前の広い道路を通る車、バス、歩く人はほぼ実写。ほぼというのは実写だと思った女の人がパトカーと重なるようにして消えたからあれはアニメなんだと気づいた。

 アニメのソフトクリームを食べる実写の女性や、靖国神社の大鳥居がアニメでそれを通り抜ける人たち、その前をUターンするバスが実写だったり。アニメの柴犬のリードを持って散歩する実写の女の人というパターンもあった。何度も繰り返される柴犬との散歩の映像に、その映像世界に入りこみたいと思った。

 たっぷりと時間をかけて作品を鑑賞した後、中庭に面したカフェに入り、クリムチーズケーキとコーヒーを味わった。友だちは木の実を使った2種のタルトと紅茶を頼んだ。

 中庭に向かって椅子が並べられ、対面を避ける工夫がなされている。

 新型コロナの時代をわたしたちは生きていると思った。少し大きな声で話したら、ウェイトレスさんに注意されたことも時間がたてばいい思い出のひとつ。

 

見へぬ指触るるがごとく鍵盤が動きて奏でる「月の光」を 

 

誰もゐぬ部屋に置かるるピアノからふいに湧き出づ「月の光」が

 

思いがけぬ失態にこころ乱れ謝罪のことば空しく繰り返す

 

犬小屋に眠る犬をぞ記憶する柿の木今年は甘き実くれつ

 

老犬が破りし障子そのままに八年過ぎて冬の陽もれいる