晴れて気温が上がり、陽射しがたっぷりと降りそそぐ。
庭に出て、植木鉢を陽当たりに移動していると「咲きましたね」と外から声が・・・・・・
向かいのマンションの敷地や周囲の道を掃除している人が話しかけてきた声だった。
眼を上げると庭に一本だけ植えてあるソメイヨシノの下の枝の花が開いている。
開花宣言から1週間ほどたち、やっとわが家のソメイヨシノも咲き始めた。いつも下の枝から咲き始め、木全体の花が咲くまで何日かかかる。これから毎日、花の咲き具合を見て楽しむことにしよう。
お昼近くになり、また庭に出てゴミ袋に入れた落ち葉をかき混ぜていると、また外から声が・・・・・・・。こんどは友だちだった。手を休めて話しかけた。友だちは数日前、17歳になる愛犬を亡くした。犬が元気な頃、散歩に愛用したハーネスとリードを手に持って、いっしょに散歩をしているという。
友だちの心情を思い、よかったらお茶でも飲んでいかない?と誘った。庭の奥には裏木戸がないため、友だちはぐるっと一区画を回ってわが家の門扉から入ってくれた。
あいにく茶菓子がなく、ほんとうにお茶だけで少しだけ話した。何も言わずに家を出てきたので、あまり遅いと心配するから、と言って。
最後の半年くらいは寝たきりの状態だった愛犬の世話を一日中ひとりでやってきた友だち。犬を思う友だちの気持ちをいつも強く感じた。愛犬がいなくなってどれほど辛いだろうかと思うと、なぐさめのことばがない。ただ、そばにいて話を聞いたり話しかけたりするだけだ。
咲きましたねと声をかけられ気づきたりわが家の桜ほころびはじむを
犬亡くしし友と思い出語りつつ花見日和の町を歩きたり