隣家の地鎮祭がおこなわれる

 60年以上住んでいた家をこわし、隣家はきれいな更地になった。
 その半分くらいに隣人の家を建てるために今日地鎮祭がとりおこなわれるという。
 一台開いているわが家の駐車場を貸してほしいと電話があり知った。
 隣は遠い親戚でわたしの母の姉が隣家に戦後からずっと住んでいた。その姉は阪神大震災があった1月の1週間くらい前に亡くなった。母と叔母はとても仲がよく、隣り合って住むことをお互いに喜んでいたと思う。叔母がなくなってからも母と従兄がいる間は行き来があり親しくしていたが、母が亡くなりその2週間後に従兄も亡くなり、その後はそれほどの親しさはなかったように思う。
 従兄の奥さんと従兄のこどもがいるのだが、わたしにとってそんなに親しい間柄とはいえない。
 今日は従兄のこどものひとりが新しい家を建てるために地鎮祭が開かれた。
 新しい家を建てるその門出を祝する意味と工事中の迷惑を詫びる気持ちからわが家をふくめ近所にお赤飯を配ったようだ。
 地鎮祭がおこなわれる間ちょうど庭にいたので柏手を打つ音を聞いた。
 新しい家が建つことをよかったと喜ぶ気持ちもあるが、前の家に住んでいた叔母や従兄と親しかったので寂しい気持ちのほうが強い。母と叔母との親しい間柄を見てきたし、隣家は商店を営んでいたので母もわたしも父も日常的に店で買い物をしていた。60年以上も。
 だがどんなに長く続いたものでもこの世にあるもの、かたちのあるものはいつかはなくなるのである。100年続いたとしても次の一年がどうなるか。神も知らない領域。




 いつものように朝、犬友だちやその犬と街を歩いていたら、卒業式に出る親子や大学生に会った

 卒業の式に向かへる三人の親子の写真たのまれて撮る
 橋のうへ娘を中に親がそい卒業の朝は写真に残りつ
 三人の親子のうしろ染井吉野はまだつぼみなれど花近し
 矢絣に袴あわせる女子大生そこだけ町が華やぎている

 地鎮祭を詠んでみる

 隣家の地鎮祭きょう日曜にとりおこなわれ赤飯をいただく
 まさらなる土地に新しき家建てる門出の日の空は晴れわたる
 地鎮祭とりおこなわれる隣家より柏手ひびく椿咲く庭
 古き家に住まひきあの世の人らともに手を打ちているやもしれず
 かしわ手の音聴きながら花終わる盆栽の梅を植ゑかへたり


 愛犬を亡くししわれを見守る人のまなざしときにうとまし
 数年で犬を二度も死なせたるわれのこころおしはかりがたき

庭に咲く椿
ピンク色の花は乙女椿
赤い花は名無しさん



 
桃の花のつぼみ

咲き始めたスモモの花
緑色をおびた白い小さなつぼみが花開くと真っ白な花になる