父の誕生日、近所の人がお線香をあげてくれた

 午前中はたまたまタクシー乗り場に並んでいる近所の人を見かけ、親切心を起こしてしまい、駅まで車に乗せていってあげた。わが家のある地域は駅まで坂道を上らなければならず、タクシーを乗る人が比較的多く、タクシー待ちの場所が決まっている。駅とこの地域を往復するタクシーが以前はかなりあったがワンメーターの料金が安くなり、往復しても稼げる金額が少なくなったためか、地域の足となり動くタクシーの台数が少なくなったようだ。
 昼食後のんびりしていると玄関先からガラガラ声が聞こえてきた。玄関に出ると近所の奥さんで今朝起き際に父の夢をはっきりと見たのでお線香をあげに来たと話した。
 おやまあと思い、どうぞと言って家に上がってもらった。
 線香を一束持ってきて、「お父さんにあげてください」と。そのなかの2本をくゆらし手をあわせてくれた。
 生前の父は何かとこの奥さんのことを気にかけていたようだ。ご主人を亡くされた後、ひとりで薬屋を営み、お子さん全員を大学で学ばせた。
 父の夢を見た原因は他にも思い当たることがあるという。この数か月、商店街の人たちが相次いで他界し、このことも商店街がまだ元気な昔を振り返るきっかけになったようだ。
 何はともあれ、父のことを思い出してくれたのは良かったと思った。今日は父の誕生日だから。
 車で図書館に行き、予約した本を一冊受け取り、その足で花屋に行き、百合とスプレー菊を買った。
 近所の奥さんが来てくれたおかげで父の墓参りをする気になった。
 家に帰り,庭の菊も合わせて花束を作り、菩提寺へ。
 生きていれば99歳になる父に手をあわせた。