亡き犬に線香をあげてくれた

 

 朝は肌寒いくらいの気温。4時過ぎに一度目を覚ましたので、玄関の扉を開けると外は真っ暗だった。7月は4時過ぎには明るかったので日が短くなったことを知った。いつもこの時期、早朝の暗さに夏が過ぎてゆく寂しさを感じる。
 2年前、老犬ももこがまだこの家にいた頃も8月半ば過ぎの早朝の庭の暗さに深い寂しさを感じた。あのときはももこの命が残り少ないことが寂しさを増したにちがいない。
 5時半ころまで起きていてまた眠り次に7時前に起きた。
 お昼近くになり、玄関のチャイムが鳴るので出ると犬友だちだった。老犬ももこと友だちの愛犬とよく一緒に散歩した仲だ。
 ももこの命日を覚えていてくれてお線香をあげに来てくれた。命日のころは日中暑くなっているかもしれず、涼しい今日なら、と思ったそうだ。友だちは持病を持っているので暑い時は無理をしないようにしてもらいたい。今日来てくれてとてもうれしかった。
 ももこのお骨を置いた祭壇にラベンダーの香りの線香をくゆらし、ももこが庭で匂いを嗅いでいる写真を見て「ももこちゃん、歩いていたんだよね」と友だちが言った。当たり前のことだが当たり前のことが胸に響いた。そうだね。ももこがこの庭を歩いて立ち止まり匂いを確認したりしたときがあった。元気な時は友だちの犬とともにけっこう歩いたね。
 居間に友だちを誘い、暖かいお茶と人形焼きを供した。広縁に置いた赤ちゃん目高を泳いでいる器を見せると、かわいい、かわいいと言った。20匹ほどの赤ちゃん目高。親といっしょにするまで二か月くらいかかるだろう。
 友だちの亡くなった親の話を聞いた。ご両親は友だちを頼りにし、何かというと呼び出したそうだ。
 亡くなった人や犬を思い出している限り、そのひとのこころのなかでずっと生き続けると友だちは言った。
 帰りには庭の紫蘇をを見てほしいと言ったので、3本ほど引き抜いて根っこごとあげた。もっと持って行ってもらいたいぐらいだが。
 午後には長い付き合いの友だちから電話があり、認知症を患っている母親の話などを聞いた。妄想がだんだん強くなり、自分の亡くなった母親がいっしょに家にいるように思っているそうだ。話すことは昔のことが多く、友だちが知らない結婚前のこととか仕事をしていた時のことが多いとか。こどもである友だちことをこどもと認識しているのかどうかあやしいと思うこともあるそうだ。

虫の声網戸の目をすり抜けば夜の畳の間を満たしをり

 昨夜よりふくらみ増したる月のかお雲なき空にさらけ出したり
 

 



友だちに指摘されたが目高がもう少し大きくなったら、器も大きくする必要がある
なにか適当な器を探しておこう
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庭の百日草を切ってももこのために飾った