東京都写真美術館に行く

 お正月も三日になると家にいることが物足りなくなってきた。
 上野の東京国立博物館長谷川等伯の「松林図」を特別展示していれば行こうと思ったが今年は展示がなかった。横浜美術館で開かれる女性写真家の展示会も見たいと思ったが明日から始まることがわかった。東京都写真美術館ではフランスの写真家ウジェーヌ・アジェとアメリカのドキュメンタリー写真家ユージン・スミスの展示会が開かれているので、こちらを見に行くことにした。
 二つの展示会の切符を買い、アジェの作品から鑑賞した。アジェは19世紀末から0世紀初頭のパリを中心に歴史的建造物や街並み、店先、室内、看板、公園、路上で働く人々など近代化が進み、変わってゆく古き良きパリを記録として撮影した。この写真を公的機関や画家、建築家などのアーティストに販売したという。
 アジェがとらえたパリの街並みや建物にはそこで暮らす人たちの息遣いが感じられ、ただ記録しただけの写真ではない。クローズアップした店の扉や窓の飾り、階段の凝ったデザインの手すりなど、写真家のまなざしの強さが感じられた。ウジェの写真は見れば見るほど味があるというか好きになってくる写真だ。
 ユージン・スミスは日本とも縁の深いドキュメンタリー写真家で、第二次世界大戦中のサイパンや沖縄、硫黄島などに報道カメラマンとして同行した。戦後しばらくしてからの一時期日本に滞在し、水俣病の実態を撮影している。特に被害者の写真はどんな言葉よりも強く水俣病の理不尽さ、悲惨さを伝えている。第二次大戦後のアメリカでは「ライフ」誌に写真と文章で構成した何ページかを継続的に発表していた。「カントリードクター」というテーマもそのひとつ。アメリカの田舎町の医者の医療生活を追った写真と短文で構成されている。
 気持ち的にはどちらかというアジェのほうがわたしの好み。