昨日とは違って陽ざしがたっぷりと注ぐ。ただ風はやや冷たい。
わが家があるのは東京のはずれなのでこのあたりは都心近くよりも桜の開花がゆっくりとすすむ。だが今日はかなり咲き進んだ桜を見ることができた。
昨日と同じように日中はほとんど家にいた。
朝方、燃えるごみを出しに外に出たら、今までに二匹の犬を連れていた奥さんが新しい犬を加えて散歩から帰ってきたのに会った。雑種の保護犬で、赤みの濃い茶色の被毛がきれいだ。フランス語で虎を意味する名前とか。
わたしに興味を示してくれたのでなでてあいさつした。ひとしきりなで、さらに二回目になでたら、あまりしつこいのは嫌とばかりにこちらにお尻を向けてお座りしてしまった。犬がいいのは自分の気持ちに正直なところ。ことばは発しないが態度でその気持ちがすぐわかる。人間みたいにややこしくないところが大好きだ。
ああ、いいなあ。犬がそばにいたらどんなにいいだろうか。もういちど犬を家に迎えいれたらどうなるだろうか。しばらくこんなことを考えた。今の生活を同じようには続けられないだろう。一人暮らしなので、わたしがいない時見てくれる人がいないから。
気持ちが揺れ動く。
昼食後、廊下に干している布団に横になったらそのまま少し眠ってしまった。仏間の外の廊下なので、横になっているわたしを父母が見守っているような気になった。父が母がこの家にいるときの生活を思い出しながらうとうとした。廊下の外の庭には花の盛りを迎えようとするソメイヨシノが植えてあり、ふしぎな昼寝だった。花の精が訪れたような。
今日も夕方になり、散歩に出た。昨日とは変えて、行きは等々力駅近くまで歩いて行った。道すがら桜の花を愛でながら、夕方を迎え冷たさを増した風に吹かれながら。
駅のそばにカフェに入り、馬場あき子さんの歌集を読みながら、自分の歌も詠った。
1時間半ほどの滞在時間。
帰りはバスに乗った。
ひとり居の午後の昼寝に見し夢は父母の声ひびく遠き日
その昔犬を連れ来しけいこくの森動物病院夜桜美し
やや手狭の十三夜の月餅つきを休むうさぎがひとりでをるぞ