永井陽子の歌集を読む

 ほとんど家の中で過ごした日曜日。

 庭には数回出て花壇やプランターの花の咲き具合を見たり、乙女椿を切って玄関に飾ったりした。雪柳も2枝ほど切ったが今年の雪柳は花が少ない。剪定時期でないときに植木屋が切ったからだろう。

 あまり陽ざしが出ず、風はないが気温が低かった。

 エアコンの暖房を入れた居間で堀炬燵に入って、図書館から借りた本を読んだ。昨年末から愛読している永井陽子さんの『永井陽子全歌集』で、読めば読むほど好きになってしまう。

 わたしより一歳年下だが51歳に他界している。この方の十代から四十代までの短歌はわたしを魅了してやまない。若いときはご自分の生活をあからさまに読む歌風ではなく、生活の片鱗さえない短歌がほとんど。だが美意識の高さというか、何を歌いたいかという意思がはっきりしていてわたしの心に強く訴える。

 短歌の読み方としては邪道かもしれないが、遠くやさしく歌われたこの方の相聞歌が好きだ。これはもしかしたら相聞歌?と思いたくなるような、控えめな歌い方が想像力をかきたてる。見せないものを見たくなる心理に似ているかもしれない。

 この方が亡くなられているので、とりわけ詠った相聞歌のやさしさがこころにしみる。

 

たわむれにかぶせてくれたる面頬の汗くさき闇もあたたかかりき

 

不整脈われにも聞こゆる十六夜のあまりに青き月を見しかば

 

透垣のゆふがほ手折るゆめを見き君が手折りしわが身は冷えて

              『永井陽子全歌集』収録『樟の木のうた』より

 

書庫の本取り出すためつとのばす手より石鹸の香はたちてくる

 

その肩にわが影法師触るるまで歩み寄りふとためらひて止みぬ

              『永井陽子全歌集』収録『てまり歌』より

 

テレビ消し外よりひびく飛行機の音かすかなりわが日曜日

 

夢のなかゆるやかな坂のぼりたる君の横吾(あ)は横笛持ちて