渋谷に映画を見に行く

 午前中、駅伝のテレビをつけながら、ブログ友のブログを訪ねた。

 文章は簡潔で読みやすく、写真がたくさんアップロードされ、見応えもある。いくつかの記事が印象に残ったがそのひとつが昨年前、映画を見に行ったという記述だ。

 『私をくいとめて』と言う邦画で昨年12月半ば頃公開された。主演女優がのん、相手役の男優が林遣都。31歳のOLみつ子(のん)が年下の営業マン多田君(林遣都)と恋に落ちてしまう。恋に落ちる前は脳内にいるAという声だけの相談役を頼りに、快適なおひとり様の生活を楽しんでいた。

 ブログ友が紹介されていたこの映画に興味がわき、インターネットで上映館を調べ、さっそく午後渋谷にでかけた。

 映画館は渋谷駅の前を通る明治通りを原宿方向に歩いたところにある。いちど通り過ぎ、戻ってきて見つかった、映画館として少しわかりにくい。

 観客はそんなに多くないがガラガラではない。わたしの左右は2席、3席が空いていた。

 みつ子の脳内にいるAと言う相談役はもちろん、みつ子自身である。どんなにみつ子が動揺したり、エキセントリックになっても、脳内のAはいつも冷静でおだやか、みつ子の見方であり続ける。Aの声は中村倫也が演じていて、みつ子を思うやさしさと冷静なリアクションがここよよく響く。ときにAが動揺することもあり、その微妙な感覚もおもしろい。

 脳内のAは気持ちの上下が激しいみつ子を上手に導いて行く役目もある。

 映画を見てゐて、わたしも似ていると思った。自分の中にもう一人誰かがいて、それで精神の安定をかろうじて保っているところ。危機を迎えるほど脳内のもう一人の自己が活発に動き、安定している時はあまり活躍しないのも同じ。

 のんの繊細で、ときにエキセントリックな演技がすごい。目が離せない。こわれそうになるぎりぎりで、立ち直るのだがその時の演技が圧巻だ。

 林遣都演じる年下営業マンの将来出世しそうにないキャラクターが魅力的。みつ子に対して営業マン的口調で話すことからなかなか抜け出せない律儀な性格もよし。

 渋谷駅の宮益坂方面はとても久しぶりなので街がすっかり変わってしまい、驚いた。別の世界に入りこんだくらいの感覚だ。スマホで街の(特に新しいビルなど建築の)写真を撮ったが、カードに保存するのを忘れ、アップロードできない。

 渋谷という街は変わってしまい、その変化を見てわたしが歳をとったことをつくづく感じたがまた訪れたいと思った。