父の表彰状を見つけた

何日かぶりに晴れて気持ちのいい風が吹く。

朝からすべての窓、扉、戸を開けて風を入れた。

午前中、8畳間の洋室にあるクローゼットの中を片付けた。不要な洋服はほとんど破棄したが、小さな箪笥(引き出しが3つ)が置いてあり、下のほうが湿っているので取り出した。

  中の洋服は湿っていないが母が残した洋服はいくつか残しほとんどを捨てた。わたしのものはセーターが多く、普段着に着ているのでいくつかを捨てほとんどを残した。こうして父や母が使ったものがどんどん減っていく。

   ただすべてを捨てることはできない。遺影となった写真を撮った時に来ていたブラウスは残してある。写真を撮ったのはわたしでこれが遺影になるとは(もちろん)思っていなかった。美容院から帰ってきたばかりの81歳の母は顔のつやもよく元気そうな写真だ。こどものころの柴犬レオを抱いている弟のお嫁さんのほうを見ている。

    箪笥の中身を整理し、タンスそのものを粗大ゴミにし、湿って泥がこびりついているクローゼットの床を水拭きした。

   これが終わるとその隣の収納戸棚に目が向かった。あ、これがあったか。いままでこの収納戸棚は意識になかった。今日見てやっと気づいた。

   引き戸を引くと湿ってすぐに開かないが強く引っ張ると開いた。

   テニスラケットも入っている。父の仕事用の鞄、母のハワイ旅行のときの土産を入れるようなショルダーバッグ、孫たちが使った色鉛筆やパステル・・・・・・一番下に表彰状を入れた額縁が2枚現れた。

   泥水をたっぷりとすって、中の表彰状は波打っている。取り出そうとすると裏側のコルクがぼろぼろ崩れる。一枚はガラスにこびりつき、破れてしまった。もう1枚は何とか額から取り出せた。

   どちらも役所を定年で辞めた後に勤めた社団法人シルバー人材センターで表彰されたものだ。これによると父は最後は会長となったようだ。一枚は会長となった父が自分自身に表彰状を贈るという珍しい表彰状。贈られる人と贈る人が同じなのだ。

   これを見てはじめて父が会長職を勤めたことを知った。当時父は78歳。数年会長を勤め、二度目の退職をしたのだろう。

 

  近くの川で一羽で頑張っている、若いかるがも。縄張りのようなものがあるらしく羽を休める場所や、えさである草などを食べる場所はある一定の範囲内のようだ。

  ひそかに「ハッチ」と名付けたが、なんかもっと元気が出そうな名前にしたくなった。「ルパン」はどうだろう。今日見たら、とても楽しそうに生きていると感じたのでこの名前がいいかも。

 

わが父がこの世で最後に賜はりし表彰状も出水につかりぬ

 

いちどだけハワイに旅せし母親が残せる鞄ゴミにはできず