久しぶりに花を持って墓参に行く

朝から雨が降り、気温が上がらない。半袖に長袖をはおってちょうどいい。
 午前中、突然、在りし日の母親のある生活のひとコマを思い出してしまい、心を揺さぶられた。母のことは毎日、思っているし、仏壇に向かうときは心の中で話しかけているのだがそれとは別に突然、今まで思い出したことのないことをひらめくように思い出したことが少なからず衝撃だった。
 母が長年親しくしていた八百屋に買い物に行き、その帰り八百屋の奥さんに家まで送ってもらうことがよく合った。その光景を思い出したのである。奥さんのかん高い声、母がなんやら話しながら庭の通路を歩いてきたその光景を。
 午後、弟がやってきていつものようにお菓子を持ってきてくれた。わたしにしては珍しく母のことを話した。亡くなったその前の年やその前々年、母は体調がよくなく、近所の診療所で診察を受けても医師の診断がはっきりしなかった。今思うとあの医者は整形外科が専門で内科の診察はいい加減なところがあったから、もっと早く違う病院に行けばよかったなどと話した。母が亡くなり10年が過ぎて今さらどうしようもないことを言ってもしかたないのだが言いたかったようだ(自分の気持ちがよくわからない)。
 弟はお彼岸に入ったら墓参りに来ると言い、そのことばを聞いて7月のお盆の後ほとんど墓参りに行っていないことに気づいた。
 弟が帰った後、坂道を上り花を買いに行き、その足で墓参りに行った。
 お彼岸が近いためか、花を供えた墓がいくつかある。真夏はほとんどの墓に花がなかったが。
 久しぶりに墓前で手をあわせ、父と母に話しかけた。
 母にはなつかしい昔を思い出しよと話しかけた。

 買い物をすませし母を送りくれし八百屋の声がふいに湧きくる