父の日に波乱あり

 今日は父の日なので昨日からお墓参りに行こうと思っていた。
 朝の散歩に行く前に庭の紫陽花と房咲の薔薇を剪り、水切りしておいた。途中、近くにあるお寺に寄り花立の枯れた花を片付けた。散歩を終えて家に帰り、さあお墓参りというときに玄関先に友だちが。先日、ご自由にお持ちくださいと張り紙した梅をもらったのでお礼に来たのだがわたしは梅の実がほしいのかと勘違い。話をよく聞きもせず、高枝はさみで梅をとっている最中にもう梅を手に入れ梅ジュースを作ったことがわかる。ついでとは言ってはなんだが採った梅もさしあげた。
 漬けた梅を見てもらうため家に上がってもらい、梅酒の瓶を持ちあげたとたんふたがとれて中の甘味たっぷりのホワイトリカーがこぼれた。敷物を濡らし畳を濡らし大慌て。三分の一か四分の一こぼしたようだ。あとで梅とホワイトリカーを足せばなんとかなると思ったのでそんなにがっかりはしなかった。
 友だちを別れお墓参りへ。梅雨空の墓地は閑散としてわたしひとりだけ。父が植えた紫陽花とわたしが植えた薔薇を手向けて手をあわせた。
 昼食の後、静かな日曜日を大変えてしまう電話があった。
 叔父の奥さんからの電話で叔父〈母の下の弟)が数日前に亡くなり、葬儀の知らせだった。長期に入院しているのは知っていたが容態の急変の知らせがなかったのでとつぜんの訃報に驚いた。多分、わたしの負担を思って知らせなかったのだろう。
 電話を切った後、もう一人の叔父のこども〈わたしの従妹〉に電話し、しばらく前に脳梗塞をおこし話しかけに応じない状態が続いていたことを知る。四か月くらいがんばったようだ。
 叔父は自宅に帰ってきているのでさっそく小雨降るなか会いに行った。物言わぬ叔父を見るのは父母の最期と重なり、またひとり・・・とことばを失った。
 もうひとりの叔父〈母の上の弟〉も同じ敷地内で住んでいるので訪ね、数時間ほど叔父を交え、その奥さんや従妹と話した。こちらの叔父は年は上だが家で家族の世話を受けて生活している。あまり話さないが耳がよくわたしたちの話を聞いておもしろいことがあるとうれしそうに笑う。叔父の笑顔が見たくてあまり話すのが得意でないわたしだがけっこういろいろ話した。わたしの話を興味を持って聞いてくれる人がいるのはわたしにとってもうれしいこと。
 叔父たちの家にいる間に雨は本格的な降りになり、小降りになるのを待って帰った。


 父母がをりし頃の部屋まなうらに湧きあがりくる目覚めたるのち

 みなぎわにがまのほ、かやつり、はんげしょう思い思いに花咲かせをり

 人の手で作られしわんどある川は命継げる工夫ある川

 日曜の街に親子連れいく組も幼稚園の催しあるや

 父と子が手をつなぎ歩く姿多し日曜の朝なれば

 父がこぐ自転車に子が乗りて坂のぼりたる何か話しつつ

 祖母らしき人と手をつなぐ幼女もをりてさまざまな日曜の朝

 歌詠めるとき友が来て庭の梅もらいしお礼を言いたしと

 梅酒のびん蓋とれ畳にこぼしたればびん倒しし犬思い出す

 叔父の死を電話に知りていまいちど顔見たしと家へ急ぐ

 目をあけぬことば話さぬ叔父がいてその死こころに迫り来たり

 わが母の弟でありし叔父古きアルバムにおさなの写真あり