お盆の準備

 また今年もお盆の季節がやってきた。
 母が死んでからこの家でお盆を迎えるようになって11回目。その前は家には仏壇もなく、お盆はどこかよその国の出来事のようだった。
 お盆という行事に向かい合うようになったことが夢のように思われる。ほんと、夢を見ているのではないか。いつか覚めるのではないか、この夢が。
 だが毎年、お盆の季節が来るのでこれは夢でないのだろう。わたしにとって現実を何とか受け止めるための守り神みたいなものがあり、それはいつでもやめられると自分に言いきかせることだ。お盆は世界がある限り続くかもしれないが、お盆を迎えるさまざまな準備、お盆をこの家で迎えることはやめようと思えばいつでもやめられる。わたしは縛られているのではなく、自由なのだと思うことでなんとか正気を保っているといえばいえるだろう。
 あ、もうお盆か。じゃあ準備ね。こんな感じで今日は車で近くのホームセンターに行き、一式を買い求めた。盆棚を作るため敷物やわら製の馬と牛など。花は百合を2本だけ買った。老犬ももこを偲んで、花壇に植える鑑賞用とうがらしの苗を買った。ももこがいた2016年の夏にも同じものを植えたから。
 家に帰り、仏壇の前に木製の卓を置き、敷物を敷き牛馬の置物を置いた。庭の色褪せてきた紫陽花を切り、水切りをした。
 二匹の犬の遺骨を置いていある祭壇もきれいにした。敷物を替え、回りに並べている写真やぬいぐるみ、首輪などのほこりを払い、また安置した。こうやって遺骨を安置するのはいつまでだろうか。時々、庭の染井吉野の根元に埋めようかと思うことがある。
 明日から東京は盆の入り。今年も無事に迎えられそうなのでそれはうれしい。

 午前中はいつものように近く特別支援学校に足を運んだ。校内のカフェでいつも会う友だちは愛犬が夜中に暑さのためはあはあ息が荒くなり、そのたびに目を覚ましてしまい、ほとんど眠れなかったと話した。友だちは難病指定の病気を病んでおり、夜眠れないのはからだに負担が大き過ぎる。わたしも睡眠不足がストレスとなり、食事内容が変わり、血糖値が高くなった。
 友だちは昼間眠るようにすると言ったが、からだを休めて無理しないでほしい。