午前中はすもも採り、午後は墓参り



 雨雲がそらをおおうが雨が降らずに夕方を迎えた。こういうのを雨模様の天気と言うのだろう。
 庭のすももがどんどん熟していくので朝から脚立にのぼり収穫した。ある程度とれるとレジ袋に入れてすぐ近所に配った。
 脚立に上り、少し前は上の方の段に立っても大丈夫だったが最近はバランスをとる自信がなくなった。いざというとき掴めるものがあれば大丈夫だがなにもないところで脚立の上の段に立つのはこわい。高い枝のすももは高枝鋏を使ってとった。
 脚立の上で手を伸ばしていると、ベビーカーを押している若い女性が通りかかった。こちらを向いて笑顔になったので、「もしよかったらすももを持って行きませんか」と脚立から降りながら話しかけた。
 見覚えのある顔ではなかったが先方はわたしのことを知っているようで話を聞くと、近くの特別支援学校のカフェでいちど同席した人だった。あのときは赤ちゃんだった子が今は歩いている。こどもの名前は「青」と言うのを覚えていた。名前のイメージから男の子だと思ったが女の子だった。ちょっとした驚きだ。
 母親は短歌の歌集の装丁を手がけていて、そのことが印象に残っていた。彼女のことを歌に詠んだほど。
 果物のなかですももがいちばん好きと嬉しがらせを言ってくれ、一袋のすももを持って帰ってくれた。
 あと3袋は隣り近所に配った。
 お昼前に買い物に行った店で友だちに会い、その友だちにもすももを一袋と梅ジャムをあげた。この友だちは連絡先を知らないがそろそろ会いたいなと思う頃に会える不思議な縁だ。
 すももの収穫で疲れを感じ、午後は家にこもろうと思ったがそうはいかず、近くのコンビニに買い物に行きその帰り、菩提寺に寄った。明日は父の日であることを思い出し、墓まわりをきれいにし、後で墓参りを出直すことにした。
 庭の花を切って再度お寺へ。アガパンサス、紫陽花、クチナシ、ミニバラを持って行った。

 「青」という名前の赤子 男の子と思いこみて一年が過ぎる

 雨雲より濃き墨色の鳥飛べば不吉な声で空を引き裂く

 溶岩が冷え固まりし山肌に空飛ぶものの小さき影