弟が家にやって来た

 気温が上がり陽射しがいっぱいの土曜日。朝だけエアコンをつけて9時頃には切った。
 お昼頃、近くの商店に買い物に行った。野菜や果物、魚、干物、乾物、漬物、米やパンも売る食料品店として土曜だけ店を開く。近所の主婦だけでなく、中年、初老の男の人たちも来てにぎわう。価格と品質を見極めながら野菜はほぼ1週間分を買うのが習いだが今日は少なめに買った。一昨日スーパーマーケットに行き、買い物をしたためだ。
 午前中弟から電話があり、午後に家に来るとのこと。昼食を食べて少したったころやってきた。いつものように菓子折りを持ってきてくれたにので、仏壇に供えた。仏壇には雛あられもお供えした。今日は雛祭りなので。
 父母にとって孫たちがまだ幼いころは段飾りを居間の仏間に飾った。仏間は父母が生きている時は寝室だったので雛飾りを飾ったときは別の部屋で眠っていた。雛飾りは仏間の天袋に今も仕舞われている。父は亡くなる前、まだひとりで起きて食事ができるときに独り言のように天袋を見上げながら雛飾りや鎧兜があると言った。あれはわたしに知らせて託すという気持ちだったのだろうか。どうしてほしかったのか聞くことはなかった。
 弟にお茶を出し、少し話した。話すことはそんなにないのだがもし弟がこの世からいなくなったらきっともっと話しておけばよかったと思うだろう。あれを聞いておきたかったということもあるだろう。母や父に対してもそんな思いがある。毎日家にいっしょにいたがそんなに父母と話したわけではない。もう二度話せなくなるということをいるときは思わなかった。そんな想像をすることは辛いのであえてしなかったのだろう。
 弟が帰ってから庭の南天の木とスモモの剪定をした。スモモの木はまだ伐り足りない。脚立に上り、高枝鋏をあやつって高い枝を切るのはかなり大変で、あまり続けてできないので毎日少しずつやることにしている。


 弟は2階に去りさつきまで居りしことを忘れさせる静けさ

 ひしめきてただひたすらに咲きゐたり吾にクロッカスはまぶしく見ゆる

 クロッカスの花どの花も日に向かひ短き首を伸ばし咲きたり

 クロッカスの花短き命なれば陽光恋うるこころの強し