友だちと日比谷で会う

 先週の約束を今日に延期して古くからの友人と日比谷で会った。
 わが家から最寄りの駅までの道は道ばたに寄せられた雪以外はきれいになり、歩くのに不安はないほどになっていた。車の運転は車同士がすれ違うとき道の端に寄せると不安が残る道があった。
 東京メトロ日比谷線日比谷駅を降り、地上に出ると広場のようなところが工事中で回りは高層ビルがそそり立っている。見上げる空は大幅に狭くなり、圧迫感がある。
 友だちと日比谷シャンテ内の行きつけの店でランチを楽しむ。店は窓側がまるくカーブを描いていて壁にそっていくつもの席がある。全体的にゆったりとしたレイアウトでゆっくりと食事や会話を楽しめる。会話は友だちの母親をはじめとした介護やわたしの歌会の話、昔の仕事仲間やその時に出会ったいろいろな人たちの話をした。広告の話になり今は故人となったコピーライターの有名な広告コピーを思い出し、なつかしかった。わたしは親の介護を卒業したが経験者なので話を聞くこともこちらから話すこともできる。
 友だちはできる限りは母親といっしょに暮らすつもりだが、妄想などの言動がありだんだん手に余るようになったようだ。
 店を出て日比谷公園まで歩いたが寒々とした公園には人影が少なく、かえって鳥の姿が目立った。花水木の冬木立と見られる木に雀の群れや名前のわからない少し大きめの鳥がとまり、逆光で黒い影となった。鳥たちは木の一部と化していたが雀が一羽また一羽と飛び去る。するとまた違う雀がやってきて見飽きなかった。
 公園を後にして無印カフェに落ち着き、カフェオレを注文してまた話した。


 積む雪に耐えに耐えたる遊蝶花(パンジー)うつすら黄色の花をのぞかす

 われに助けを求むる声なければ湯船につかり寂しくもある

 山影を遠くビルの間に見せ住宅街を電車は走る

 高層ビル立ち並べる日比谷交差点 十日前の雪黒ぐろ残る

 ガラス張りの店で話す壊れゆく人らのことをわれらもいつか

 人影より多き鳥影 花水木の冬木立の一部となりて

 チューリップの細き指のやうな芽が欅の根もとに春を恋ひたり