「マティスとルオー展」を観に行く

 朝から気温が上がり暖かい春一番が吹き荒れる。洗濯をしたが厚地の敷物やバスタオルだけ外で干し、他のものは室内干しにした。
 犬友だちといつものように朝の散歩をした。一昨日亡くなった柴犬のことを少しだけ話した。もう骨になっちゃたねという友だちのことばがずしんと胸に来て何も言えなかった。
 前々から時間があるときに行きたいと思っていた「マティスとルオー展」を観に行くために午後からでかけた。JR山手線・新橋駅を降りて7〜6分くらいのところにあるパナソニック汐留ミュージアム3階でで開催している。ゆりかもめの新橋駅の近く、高層ビルが林立する一画にある。以前何回も訪れたことがあるのだがこんなに高層ビルがあったけ!と始めて来たみたいに驚いた。
 展示会場はわりあいとコンパクトで人も混み合うほどではなく、ゆっくりと心ゆくまで鑑賞できた。30年くらい目になるだろうか、女友達にわたしの顔がルオーが描く絵に似ていると言われたことがある。黒い太めの輪郭線が特徴で絵具を厚塗りにした、あの顔である。そのときからルオーという画家に興味があったのだがあれ以来彼の絵画をまとめてみるのは初めてである。ルオーの絵を見て好きだと思った。
 黒い輪郭線に縁どられた女性の顔や姿、ピエロの顔、人間が持つさまざまな個性を描きわける確かな表現力に感嘆した。晩年になって色彩が鮮やかになったのも共感できる。
 マティスは晩年の切り絵「ジャズ」の一連の作品群を見ることができよかった。マティスが設計と装飾デザインを行った教会は製作工程もふくめて映像で見ることができた。
 マティスとルオーがかわした手紙や葉書から真の友情を感じ取ることできた。第一次世界大戦から第二次世界大戦を経る大変な時代に、誰とも違う個性豊かな表現、芸術を追求し達成したふたりに尊敬の思いを深くした。

 春いちばん塔婆を鳴らし父母のねむれる墓地を吹きわたりたり

 万葉に雪と譬へられし白梅の花びら散り舞ふ春一番

 玩具の電車の如くゆりかもめ高層ビルの谷間を行きたり

 山手線に身をゆだね運ばれたり行き先は地獄いな新橋駅

 絶壁のガラスに飛ぶ雲映り近未来行きのエレベータゆく

 片空に鈍色の雲吹き寄せる人生の明暗わけるごと

 門先に春のつま先見える日は手に若草色のバッグ持ちて