冷え込みの強い朝、植木屋がくる

 朝はひさしぶりに目高が棲む瓶に薄氷が張った。花壇やプランターの草花にも霜が降り、花びらに氷の模様がはりついていた。
 いつものように老犬ももこが縁で知り合った犬友だち、その愛犬と散歩し、帰りはお寺に寄り花立の水を替えた。束になった花をほどいて傷んだ葉や鳥に食べられた黄色の菊を取り除いた。お線香をたいて手をあわせた。日あたりが良いからだろうか。境内に数本ある白木蓮のなかの1本が特につぼみがふくらみ、もうすぐ開きそうに見えた。
 家に帰ると植木屋が来ていた。昨日は雨の後で葉っぱが濡れているという理由で休みにした。今日は朝から晴れて植木屋日和である。
 花が終りかけていた紅梅の枝も切り詰めた。地面に落ちた花がまだ残っている枝を何本か拾って切り花にした。まだつぼみの白梅の枝も切ったので、つぼみがたくさんついている枝を何本かひろい、家の中で花を咲かせることにした。花が咲く前の枝を切ることにわたしは抵抗があるが切るのが商売の植木屋はそんなことは言ってられない。
 いつもは10時と3時にお茶を出すのが慣例だったが今日は10時は省略して3時だけにした。近くの和菓子屋で菓子を買った後多摩川の河原に足を伸ばした。風もなくおだやかな河原は歩くと気持ちがほどけるような感じがした。雲が多い空だが南西は晴れていて陽射しが降りそそぐ。川が眺められるところまで歩いた。多摩川の本流が中州でふたつに分けられていて、ゆるやかな流れになっている。特に中州にちかいところは小さな池のようになっていて、そこに小さな水鳥が数羽いた。逆光でどんな色柄の鳥なのかわからないが、ひんぱんに水に潜るのでかいつぶりだと思う。実に身軽に水の中に潜り込むので拍手したいくらい。小型の鳥で愛らしくいっしょうけんめいなのがぐっとくる。

 三色菫(パンジー)のはなびら霜を抱きて古びた布のやうにへたれり

 写真の中の愛犬にあいかわらず元気だねと声かけ冬の朝

 わが犬の座りしベンチそのままに野球グラウンド人影のなし

 青よりも雲の勝れる空なれど陽光そそぎ春ほのかなり

 におどりの三羽四羽が順ぐりに水にもぐりてかくれんぼ

 かいつぶりもぐれば水面は静かに閉じたいらとなりたり

 ひよんともぐる技、人は及ばずただ眺めて見飽きることなし

 かいつぶりが泳ぎきて十羽ほどのやさしき軍団をつくれり

 光満つ川面を泳ぐかいつぶり引き波伸ばしてさかのぼりゆく

 かいつぶりの黒き影たち視界を遠ざかり舞台の袖へ

 薄紫の小波立てる川面のある部分は光の粒まき散らす

 部屋の扉あければそこに先客が、月の光のまろうどおりぬ


霜がおりてくたっとしたパンジーだが気温が上がると
花びらの張りが戻り元気になった 

植木屋が剪定した後の梅の木や柿の木

こちらは剪定後の金木犀