庭に来る野鳥はツグミだった

 今年になって何回か庭を歩いている鳥をみかけた。全体は地味な色合いだが一部分赤茶色が入った羽根が印象的だった。記憶をもとにネットで検索してみると「ツグミ」ということがわかった。木の実がなくなる年明けごろから地面を歩いて虫を探すとのこと。ロシアの極東地域で春夏は繁殖のために過ごし、冬はあたたかいところに渡ってくる。わが家の近くにも飛んできたのだと思うとようこそと言いたくなる。長い旅お疲れさま。無事に食べ物の少ない冬を越せるといいね。もうすぐ春だよ。
 一年中見かける雀や鵯(ひよどり)、軽鴨も身近な鳥として親しみを感じるが遠くから渡ってきたと思うとひとしお気持ちが入り込むようだ。
 名前がわかったので庭に訪れるツグミをこれからも見たいと思うが、わたしが関心を寄せると来ないような気がする。待たないでいると来るような気もする。
 朝の目覚めの際に母の夢を見た。からだの調子が良くなくベッドから起きたくないし食べる気もしないと母は夢の中で話した。わたしは起きるのが大変なら横になっていてもいいけれど食事の時だけは起きて食べた方がいいと母に言った。体力が衰えてしまうから、と。
 もひとつの夢も母が出てきて妙なことを言った。祖母が死んだ時に形見分けに何ももらわなかったというのだ。悲しそうに言ったので気になった。祖母はわたしの母にとっては母親で、たとえ結婚してこどもができ自分が母親になっても自分の母親への気持ちは変わらなくあったにちがいない。母のそういう気持ちをわたしは汲み取ることができなかった。母のなかになにかの思いが残っていたのかもしれない。
 友だちのアドバイスで、母親が生前食べたくても食べられなかったと思われる海苔巻きを買ってきてお昼ごはんにいっしょに食べた。アルバムの祖母の写真を仏前に置いて母に話しかけた。おばあちゃんはきれいな人だったねと。


日ごと来て気にかかる鳥をネットで調べてみればツグミと知りぬ

露西亜より訪れし鶫(つぐみ)梅の枝にとまり遠く見る目をしたり

庭を歩き虫探すらしあちこち移動する鶫を遠巻きに追ふ

亡き母が夢に現れ祖母からの形見分けなきことを嘆ける

調子悪く起きられず食べたくもなしと夢の中の母訴へる

隣りの家が少しづつこわされるを見つつ如月過ぎてゆけり

好物の海苔巻き母と味わへばこころふたつやわらゐでおり

白梅はほぼ満開

つぼみのふくらみが目立ってきた沈丁花

椿のつぼみも先の赤みが濃くなってきた