乙女椿を水彩画で描く


 新しい年になって一枚も絵を描いていないなと思い、思い立って庭の乙女椿を描いてみた。
 一枚も絵を描かないで季節が進んでいったらきっと寂しい気持ちになるだろう。柴犬レオがいたときも、ひとりになったときも、老犬ももこがいたときもいつも絵を描いていたから。
 寒さが厳しいので庭の乙女椿はあまり咲いていない。ひっそりと葉陰で咲き始めた花を容赦なく剪定鋏で切った。悪いなと思う気持ちはあるけれど絵を描きたい気持ちのほうが強いのでごめんなさい。
 花がひとつ付いた枝をテーブルの上に乗せて描いた。花にとって水がない状態なので手早く鉛筆スケッチして手早く透明水彩色絵具で彩色した。
 炬燵に入って絵を描いたのでかたわらにはももこの写真が何枚も並べてある。絵を描いているときは集中していたが描き終わり、言葉に出してももこに話しかけた。お母さんまた絵を描いたよ、みたいな感じかな。

夕日の色の橋灯ともる街川を愛犬と幾たび渡りき

入日の色の橋灯に桜の木の夢幻となるきさらぎかな

東の空に大きな星見つれば動く星、飛行機となりて近づきぬ

風に揺れ動く葉影のせ主のなきベッドは陽だまりに眠りてをり

門柱に父の名いまだ記されつ七回忌も過ぎ行きたるに

夏の宵の門涼みに打ち水すれどこもる熱気は去らず

障害をもつ子らも門出迎たり小さきつばさ社会へ羽ばたく

半壊した家は眼球のない目のやうに部屋をさらしてをり

壊される家をいちばん悲しむひとこの世におらずとなぐさめたり

庭咲きの乙女椿を描けりバーミリオン白、マゼンタを混ぜ