雲ひとつない青空の元日

 朝の冷え込みは少し緩んで日中も陽射しが出てあたたかった。
 老犬ももこがいないお正月はいつものように犬友だちやその犬と朝の散歩をしてはじまった。元旦だからといって友だちと交わす会話はいつもと変わりなく、ことしもよろしくお願いしますと言って別れた。
 その足で近くの菩提寺まで歩き、花立の水を替え手を合わせた。朝早いのでお線香はまだ外に用意されていなかった。お寺の本堂の前には鉢植えのシクラメンが飾られ、日中お線香の束が用意されている横には梅の盆栽が置かれていた。住職さんが花が好きで小まめに季節の花を飾っている。
 家に帰り午前中午後とものんびり過ごした。お昼前に年賀状を郵便受けから持ってきて宛名ごとに分けて2階に持って行った。これは生前の父の役目だったが亡きあとはわたしがやっている。
 お昼ごはんは雑煮を作っていただいた。お餅はひとつにしたほうがいいのだがものたりないので例年とおりふたつにした。新聞を読んだり歌を作ったり歌集を読んで過ごし、まだ陽射しが暖かいうちに近くの神社に足を運んだ。旧年のお札を燃やしてもらうために持って行った。本堂の階段を上がり、礼をしてお賽銭を投げ入れ、柏手を打った。神主さんが幣を振った。
 神社からの帰り、寄り道をした。ももこといっしょに歩いた道をたどってみた。ももこはそんなに家から離れたところまで歩かなかったが、わが家に来てからしばらくはあちこち歩き回った。高台の神社から坂を下りるとしばらく平坦な道でその後緩やかな坂を続いている。その坂を急に勾配がきつくなる手前までももこと一回だけ歩いた記憶がある。ももこは緩やかな坂でも後足に負担だったようでその後は坂道を避けるようになった。
 勾配が急になるところから階段が違う坂道へとつながっており、その階段を上って高台に出た。この階段は柴犬レオとよく降りた思い出がある。急な階段なので上ったことはなかったように思うが一回くらいはあったかも。
 二匹の愛犬の思い出をたどって歩いた。そんなに長くは歩かなかったがももこやレオを思い出しながらの散歩はさみしさとあたたかさがある。
夜は2階にお呼ばれされ、弟夫婦や甥夫婦とそのこども、姪とそのこどもと鉄板焼きを食べた。日頃気を付けている食事管理のことなど忘れて食べたり飲んだりした。5人のこどもたちにはお年玉をあげた。レオとももこにもお年玉をあげた。

 マリンブルーに黒少し混ぜた元日の凹凸のない空うらがなし

 元日のまっさらな布のやうな空を羽根光らせて鳥群れ飛べり

 上向きの線香花火のごと八つ手はわが世の冬を謳歌しており

 首を折り下向きに枯れしあぢさゐのすぐ下に次の芽があり

 先がけて咲く乙女椿ひとつふたつみんなといっしょに咲くのはいやと

 水仙のひと房寒の庭隅に無口な顔して咲いておりぬ

 脱皮したぬけがらのやう洗濯ものゆらりと揺れる風がないのに

 桃の木にわたしたる物干竿 四十雀がとまり飛び去る

 元旦の庭訪れし鵯はひとつ残れる柘榴つっつく


庭の紅梅は寒いのであまり咲き進んでいない
ゆっくりと咲いてくれればいいな

2017年の年賀状
昨年5月に咲いたクレマチスを描いた
今年もよろしくお願いいいたします