老犬ももこの友だち犬が押ピンを飲み込んでしまった

 朝はいつものようにももこの友だち犬の柴犬とその飼い主さんと散歩をした。大学の敷地内を通り抜けるコースである。風が冷たく季節の移り変わりが身にしみた。
 家に帰ってしばらくしてその飼い主さんから携帯電話があったがわたしは固定電話で話しているため出られなかった。すぐコールバックすると今病院にいると言う。驚いて話を聞くとカレンダーをとめるための押ピンを落としたところ、柴犬のTちゃんが飲み込んでしまったとのこと。レントゲンで調べると胃の中に食べたものの上に乗っかっているような状態で見つかったそうだ。吐かせるために嘔吐を促す薬剤を注射して吐くのを待っているようだ。
 病院に行こうかと聞くと「いい、いい、経過を電話するから」と言ったが電話を切った後、家で電話を待っているより病院に行った方がいいという気持ちになった。急いで家を出て歩いて向かった。
 15分くらいで病院に着いたがTちゃんは待合室で立っていた。まだ吐かないとのことだ。さらに10分くらい待っても吐く様子がないので診察室に入り、嘔吐を促す2回目の注射をした。診察室から鳴く声が聞こえて来る。飼い主さんは涙を流している。わたしも不安で押しつぶされそうになった。Tちゃんは高齢犬で内分泌系の病気(クッシング病)のため薬を毎日飲んでいる状態。麻酔をかけて内視鏡を使ってとるのは危険が伴う。吐かせるのがいちばん負担が少ない方法なのだ。診察室が静かになり気をもんでいると少したってからドアが開いた。獣医師が押しピンをのせたトレイを持って出てきて、出ましたよと言った。飼い主さんはよかった、よかったと言いながら泣いた。待合室にいた診察待ちの人やわたしはほっとして笑顔になった。
 押しピンを吐いた後は吐き気止めの注射をしたのだが、吐き気はすぐにはなくならず、その後1回病院で吐き、帰りの車の中で1回吐いた。後で電話をかけると家に帰った後はもう吐かなかったそうだ。昼食は抜いて夕食はいつもと同じように食べたとのこと。
 
 病院から家に帰ったのはお昼頃で昼食を作って食べ、少し休んから庭に出て庭仕事をした。柚子の樹を剪定し、レモンの樹も剪定した。柚子の枝を切ると柑橘の匂いがする。いい香りだが柚子の枝には4〜5センチくらいの鋭い棘があり、軍手をしていても何回か痛い思いをした。レモンの樹はいつも短く切り詰めるのだが今年は花が咲いて実がなるのを期待して伸びすぎた見苦しい枝だけを切った。5月頃花が咲き、冬の寒い時期に果実が実るらしい。
 庭仕事をしながらわが犬ももこのことを思い出し、泣いた。久しぶりに動物病院に行き〈ももこの病院とは違うが)、最後のほうは通院が多かったももこのことを思い出した。この家にやっと落ち着くことができたと思ったらそれは短い間だった。その短い間にももこはいっしょうけんめい「ここはわたしの家よ」
と主張していた。家の中に一度だけ友だち犬が上がったとき、ももこは自分の生活圏内に他の犬が入ることを嫌がった。友だち犬におやつをやったら、ううと威嚇した。ももこは自分のものと思ったものを守ろうとした、そのことが今となってはせつなく思い出される。

 長いピンを飲み込みし友だち犬嘔吐剤にて吐き戻したり
 飼い主は涙浮かべて床のピンすぐ拾わないこと悔みおり
 老犬ゆえ麻酔はリスク高過ぎて吐かせるしか方法なし
 愛犬の介護せしを思い出しいないことをつくづく寂しむ
 帰り来て愛犬の名を呼ぶけれど待つ犬いなく冬の陽のさす
 切った枝から柚子の香りたちたり柚子の樹は柚子の香りの樹なり

冬の花壇の彩り、プリムラ・ポリアンサ
ピンク色の濃淡の家を並べて植えてみた

大きなプランターに植えたフリルパンジー
寒さに向かう中ゆっくりと花が咲く

植え付けが終わり春を待つ花壇
ビオラプリムラは寒い中でも細々と咲いている