金木犀の絵を描く

 今朝目が覚める前に老犬ももこの夢を見た。夢の中のももこは遺影の写真と同じように横座りになって写真と同じ表情をしていた。昨夜眠る前にももこの写真をまじまじと見て、何を考えていているのだろうと思ったら涙が出てきた。そのことが夢に影響しているようだ。
 夢の中でわたしはももこの治療費のことを心配していた。実際ももこの治療費の心配をしていたので夢になったのは不思議でないが寂しい夢だ。
 夢を見たためではないと思うがももこのいない寂しさが募る一日だった。
 朝食用に作ったサンドイッチをももこにお供えした。ももこが低いテーブルの上に載せたわたしの朝食の残りのサンドイッチをかじったことがあった。足が不自由なももこは無理な姿勢で食べようとしたのだろう。尻餅をついてしまった。食べかけのサンドイッチがテーブルの端のほうにあったが、具材が載った方のパンはそのままお皿に残っていたのがなんか可哀そうに思えたのを覚えている。食いしん坊なももこを思い出し、最後のほうは食べられなくなったももこを思い出し、涙が止まらなくなった。
 ももこが他界してひと月あまり。まわりの人たちはもう、ももこのことを忘れたにちがいない。人の犬のことなど大したことではないのである。ただ、いっしょに暮らしたわたしだけが寂しさを引きずっている。わたしがももこのことを忘れたり、ないがしろにしたらももこが可哀そうだが、他の人たちは勝手に忘れてください。
 庭の金木犀は満開を過ぎ、花びらが散り始めた。短い命の花である。今まで描いたことがないが今年は描きたくなった。ひと枝を鋏で切り、花瓶に入れずにテーブルの上に乗せてスケッチした。つやつやした葉っぱに特徴がある。花は花弁が4枚の十字形である。花は小さいがひとつひとつが薄緑色の細い茎のようなものの先についている。細い花茎があることに絵を描いて初めて気づいた。

太めの鉛筆でスケッチして、透明水彩色絵具で彩色した



種から蒔いて育てた千日紅が咲き揃った