東京都写真美術館に行く

 朝起きると庭の通路が雨に濡れていた。気温が少し下がった感じがした。
 午前中は少し買い物をしてお昼前に家を出た。恵比寿にある東京都写真美術館で開催中の「杉本博司 ロストヒューマン」を観に行くためだ。
 今日は都民の日なので入館料は無料だがそれほど混雑はしていない。
  3階展示室と2階展示室に展示されている。3階は「今日 世界は死んだ もしかすると明日かもしれない」というタイトルで入口と出口に杉本博司の「海景」の写真が展示され、錆びたブリキで区切られたいくつもの囲いの中にさまざまな思想や職業を持つ人から見た世界の終わりが描かれている。「理想主義」「養蜂家」「遺伝子学者」「安楽死協会会長」「コメディアン」など多彩な人たちだが中には「バービーちゃん」のように人間でないものも交じっている。
 展示物と手書き文字のメッセージで構成されている。展示されているものは、現在の世の中であまり価値を持たないようなものが多いように思うが、もしかしたらこれらが必要とされる時代がいつか来るのかもしれないという妙な不安感が湧きあがっている。日本の軍隊の勲章が並べられているのを見ると、勲章が今の世の中で価値を発揮することはないがこれらが価値を持つ時代があったことを思い出させる。またこういう時代が絶対来ないとも言えないところがこわい。
 階段を降りて2回展示室は、アメリカを中心とした昔使われ今は廃墟となった劇場で杉本氏が選んだ映画を映写し、その明かりを用い長時間露光で撮影した写真が展示されている。タイトルは「廃墟劇場」。映画を映しているスクリーンのところは光があふれ白く写っていて、劇場の内部はその廃墟ぶりが暗いながらもはっきりと写されている。
 もうひとつの3階の展示は「仏の海」で、京都の蓮華王院三十三間堂に安置されている千手観音像を撮影した写真が大判に引き伸ばされ、9点展示されている。平安末期に後白河上皇のために平家の清盛が千一体もの千手観音像を拝するこの蓮華王院を建立したそうだ。たった一体の観音像に救われることもあると思うが、千一体となるとどれほどの祈りが込められているのか。
 書いていて疲れたのでこの辺で展示会の説明はやめることに。
 家に帰り、友だちから電話がありしばらく話した。友だちに声が元気になったと言われた。同じ友だちと前に電話で話したときは老犬ももこが他界してから2週間ほどたった頃で、家にいても気持ちが落ち着かず、ももこのことを思い出しては泣いているときだった。今はあのときよりは落ち着いてきた。