夢の中、老犬ももこに食べさせようとする

 台風10号が接近しているためか蒸し暑い。時折雨が降るがすぐ止んで、雲の切れ目から青空がのぞく。ますます蒸し暑くなる感じ。
 昨夜は2時間半ぐらい眠った後目が覚め、1時間あまり起きていてまた寝入った。朝起きたのは5時半ごろ。二度目が覚めたわけだが、どちらも目覚める前の夢の中で先週他界したももこに何とか食べさせようと四苦八苦している。目が覚める寸前。ももこは身体がないのにどうして食べさせるのだろうかと意識が問いかける。すっかり目が覚めても食べさせようとした焦りみたいなものが余韻となって残っている。
 ももこはもういないのだが、わたしの脳はそのことがわかっていないように思える。わたしの脳がわかるまでもう少し時間がかかるだろう。何週間か何か月かはわからないが時間をかけて、ももこはもういないということを脳が受け入れていくにちがいない。
 ももこがあのおだやかな顔で夢に現れるのは、ももこの死を受け入れてからのような気がする。


手のひらに最期の鼓動残しおき わが老犬はこの世を去りき

優しき目今でもわたしを見ているよう命果てにし老犬の

焼かれゆく老犬のからだ思ひつつ「現代秀歌」読む控へ室


 ももこのことをいつも気にかけていた犬友だちから電話があり、ももこの写真を一枚ほしいとのこと。ももこのことをいつまでも忘れたくないからと言ってくれた。ももこのことを覚えてくれる人が一人でも多い方がももこはこの世に長生きできるような気がする。心の中で、記憶の中で、ももこは長生きてほしい。もちろん、わたしはももこのことを忘れるはずがない。ももこがわたしの手のひらに残した心臓の最後の鼓動は
いつまでも動き続けるだろう。