ポンピドゥー・センター傑作展を思い立って観に行った

 雲が空を覆ってはいるが午前中はときおり晴れ間が出た。久しぶりに庭に出て、庭仕事をした。夏の間に伸び放題になった名前のわからないつる性の植物や、クチナシの木、枝が広がって周りの木のかぶさっている夾竹桃などを切った。
 切った枝を片付けた後、庭の通路に生えている草を引き抜き、早々と落葉し始めた梅の黄色い落ち葉を掃除した。そろそろ庭仕事を終え、家に入ろうかと思ったとき、家の前の道に白い小さな犬を連れた奥さんが立ってるのに気付いた。亡くなったももこと散歩している時、その奥さんが連れていたジャック・ラッセル・テリアの女の子に出会った。その子はまだ数生まれて数か月の子犬で、おっとりしているももこが気に入ったみたいでさかんにじゃれかかってきた。その後何回か散歩の途中で会い、そのたびにその子はももこの後を追うように着いてきたのである。
 今日連れていた白い子犬はその後新しく飼うようになった犬で、その奥さんの家は2匹の犬を飼っている。奥さんはももこのことをわたしに訊ねた。ももこは8月26日に亡くなりましたと言うと、やはり・・・・・と返ってきた。ももこが闘病中、この奥さんに道で会い、ももこが吐くことが多くなったことを話したことがある。その後、ももこの姿を見かけなくなったのでもしや、と思っていたのだろう。
 犬ともども家に上がってもらい、ももこの遺骨の前でしばらく話した。ももこの写真も見てもらった。その方が帰った後で、ももこがジャック・ラッセル・テリアの女の子と歩いている姿が目に浮かび、目頭が熱くなり泣いてしまった。あの頃のももこはそんなに長い散歩はできなかったが家の周りはよく歩いていた。ああいうときもあったのに・・・・・。
 午後はももこのことが頭から離れず、家にいるのが辛くなった。どこかに行かないとという気持ちになったとき、観に行ってもいいなと思っていた「ポンピドゥー・センター・傑作展」が昨日で終わることを思い出した。そこででかけることにしたのである。
 外出の支度をし始めるとももこはいつも不安そうな目でわたしを見ていたが、そういうももこがいないことが身軽に思えると同時にとても寂しく感じた。
 展示会は上野の東京都立美術館で開催している。ラッキーなことにシルバーは観覧料が無料の日だった。この日を目指して行ったわけではないので、現地で始めて知り、うれしかった。もう一つ、東京都美術館開館90周年記念展「木々との対話」も無料で観ることができた。
 傑作展のほうは、1906年から1977年まで一年ごとにひとりのアーティストに付き一作品が展示されている。71人のアーティストの71の作品が展示されている。展示の仕方はおもしろいが物足りないところもあった。好きなアーティストの作品はまとめて見たい気持ちがあるからだが、こういう展示方法はまた別の楽しみ方があると思い、十分楽しむことができた。
 木々との対話展もさまざまな木を素材とした作品に出会うことができ、とても興味深く楽しめた。
 ももこが家にいて帰ってくるわたしを待つことはないが、ももこが寂しい思いをしないですむのはよかったかもしれない。わたしが寂しい思いをするのは仕方ないと思うしかないようだ。

東京都美術館の庭に植えられた銀杏の根元に赤茶色のコルクを
敷き詰めて、木のある風景を作った
これも「木々との対話展」の作品のひとつ