泣きながら庭仕事をした

 朝から晴れて気温が上がったがエアコンなしで過ごせた。真夏日にはならなかったような気がする。陽射しは強いがどこか秋の気配がある。
 陽射しがまだおだやかな朝、老犬ももこのお世話で先延ばしにしていた庭仕事をぼちぼち始めた。スモモの木に毛虫がつき、細い枝先の葉っぱが食われているのが目立っていた。毛虫のついている枝ごと切り離し、殺虫剤で退治する作業をした。だが高枝鋏で上を向いて枝を切ろうとすると、それほど高くない太陽だが光が目に入り切りにくいことがわかったので数本だけ切りやめた。枝に付いてきた毛虫はすぐやっつけた。
 お隣との境に自然と育ってしまった桑の木が、大蛸の手足のようなくねった枝を隣りの庭に伸ばしているのが気になったので、根元から切った。この桑の木は多分父が植えたのではなく、鳥の糞から発芽し育ったものだと思うが、陽当たりがそれほどよくないので枝が徒長して目障りになる。枝をすっきりさせて脚立から降り、枝を手で適当な長さにぼきぼき折って二束にまとめた。しゃがんで枝を折りながら突然泣きだしてしまった。ももこが家の中にいないことが寂しいというより、ももこの人生を思い不憫に感じ泣けてきた。この世に生を受けてどこかの家に飼われてそのまま命をまっとうすればよかったのに、何が起こったか、迷い犬の境遇に陥り、ももこの苦難が始まった。どんなにか焦り、絶望し、生きようともがいたことか。
 最後にわたしの家にたどりついて、ももこをつかの間でも幸せにしてあげられたのだろうか。
 作業をしながら号泣した。泣けて泣けてしかたない。
 涙がおさまると地面に茗荷が出ているのが見え、いくつかを収穫した。 
 茗荷を玄関先に置き、こんどは柿の木の下いちめんに草が生えているのが気になり、草取りをしたがここでも涙が出てきた。汗拭き用の首に巻いたタオルで鼻をかみながら草取りをした。ももこ、ももこと心の中で呼びながら。
 泣いているわたしをももこがどこかで見ているような気がした。そのももこがわたしのそばにやってきて、そっと座ったような気がした。


泣きぬれて庭の草引くかたわらに亡き老犬がそっと寄り添う

愛犬が亡くなりし後も台所で米研ぐわたしがいるのが不思議


枝先を毛虫に食害されたスモモの木

ももこの遺骨はももこが夜眠っていた和室に置いてある
この部屋はわたしが昼間でも過ごすことがあるから
居間に置くと夜の間寂しい感じがした