骨になったももこと共に家に帰る

 曇りでときどき雨がぱらつく。気温は上がらないが蒸し暑い。
 朝10時過ぎに葬儀社の車が迎えに来て、ももこがいる霊堂に向かう。段ボールに安置されたももこと対面し、家から持ってきたドッグフードやクッキーをももこのそばに置き、プリントした5枚ほどの写真も入れた。わが家で過ごした日々をももこに忘れてほしくないから。最後のほうは辛い時があったけれど、こんなおだやかな日々があったのだよ。
 お線香をあげ、火葬場に移動し、ボイラーに入れる前に最後の別れをした。私に甘えて鳴いていたあのももこがこの世からいなくなるなんて信じられるだろうか。手のひらに落ちた雪よりもはかない。過ぎてしまうとすべてはあっという間に感じられる。
 号泣した後、手を合わせ、ももこに別れを告げた。
 待合室で1時間半近くの時間を待つ。昨日ももこを見送ってくれた友だちのひとりが車で迎えに来てくれた。そこにももこの骨が運ばれた。小さくなってトレーにひろげられている。足の骨は太くてしっかりしているとの事。この足で歩けなくなったももこが不憫になり泣いた。こんな姿になるなんて。数日前はわたしに抱かれて部屋を移動し、支えられておしっこをしていた。おしっこをしたくなると鳴いていた、あのももこが・・・・・・・。
 友だちと二つの箸で骨をつまんでいくつか骨壺に運んだ。焼いてくれた人が残りをきれいに中におさめてくれた。心づけにいくらか包んで渡した。霊堂まで骨壺を持って移動し、骨壺を仏壇に置いて、お線香をあげた。
 友だちの車に乗り家路をたどる。途中、ファミリーレストランに寄り、ももこの遺骨を持って店内に入り、昼食をとる。ももこは隣の椅子にいる。前はレストランに入ることなどなかったのに、骨になって初めて入ることとなった。あら、ここはどういうところなのかしら、おいしそうな匂いがするわ、なんて言っているかも。
 物言わぬ動かぬももこ、小さくなってしまったももこ。生きていたももこの名残であり、痕跡であり、記憶の破片かもしれない。
 どんなに一生懸命に生きても最期はこうなってしまう。苦しみから解放されたということはあるにしても。
 家まで送ってもらい車を降りると、お向かいのご家族がたまたまいらっしゃって、ももこが亡くなったことをを話した。少し早く亡くなったお向かいの愛犬も最後のほうはよくももこのトイレの時間と一緒になって、真夜中に家の前の道路で会うことがよくあった。あの頃がなつかしく思えた。
 骨になって家に帰ってきたももこ。こんなに変わり果てた姿で、と思うと泣けてくる。あの人懐っこい瞳はどこにいったの?
 ももこ、もしできるなら、この家で、お母さんのそばでゆっくり休んでね。天国なんて遠い所よりここがいいよ。


ももこのお骨は昼間のベッドが置いてあった居間に仮に置いた
どこに安置するのがいいか思案中
昼間は居間、夜は寝室でもいいが落ち着かない感じがする