さきほど地震が起きた

 老犬ももこが落ち着かない様子だったので抱いて玄関外に出し、首輪をつけて歩き始めたときだった。
 地面がゆらゆら動いたような感じがした。地震だと思い、ももこを抱いて家の前の道路に急いで出た。屋根付きの駐車場は地震のときはこわいので飛ぶように通り抜けた。
 住宅街のあちこちから地震が起きたことを知らせる女性の声が流れる。落ち着いてくださいと言っているようにも聞こえたが、アナウンスされた内容はほとんど聞き取れなかった。
 空を見上げると、半月から少し大きくなった月のまわりにくっきりとした光の輪が見えた。まるでお月さまが濃いめのアイシャドウをしているような、華やかな印象だ。
 ももこは地震には気づかなかったようで、覚束ない足取りで道を歩いておしっこをした。家に戻り、おしっこを水で流すために再度外に出て、月を眺めるとさきほどの光の輪は嘘のように消えていた。あれは地震を知らせるサインだったのだろうか。

 今日は慢性腎不全を悪化した老犬ももこに自宅で二度目の皮下点滴をした。一回目よりはスムーズに出来たがひとつだけミスをした。新しい注射針のキャップをなくしてしまった。今回使った注射針に次の点滴まで蓋をしておくために必要なものなので、しかたなく前回の針のキャップで蓋をした。皮下点滴はだんだん慣れるとミスをしそうな気がするので、一回一回ていねいにこなしたい。
 土曜日からわわが家では珍しく家を訪れる人が続き、今日は庭を見に来た近所の女性がひとり、ももこの様子を見に来てくれた友人がひとり訪れた。ももこの様子を見に来てくれた人はひと月あまり前愛犬を亡くした方で、そのわんこの話をした。朝食を食べ終え横たわっているももこを撫でたり話しかけてかまってくれた。わたしのためには昼食に、とお惣菜を詰めたお弁当を持ってきてくれた。
 午前と午後の空いた時間にはオオムラサキツツジの剪定の続きをし、大輪朝顔と百日草の種まきをした。