老犬ももこと家で過ごす

 今日もカンカン照りの一日。風はあるが涼しくない。暑い風だ。庭ではミンミン蝉と油蝉が夏の暑さをしのぐパワーで鳴いている。暑いほど鳴き声ガパワフルになる感じがある。蝉にとっては一生に一度の夏。土の中から目くるめく陽射しの中へ出て短い生が始まり終わる。がんばれ。声を張り上げて鳴けと心の中で応援した。
 早朝、花壇い植えたグラジオラスの葉っぱの先端に、くすんだ色の油蝉がとまっていた。葉の裏に抜け殻がしがみついている。孵化したばかりの蝉が飛び立つ前に力を蓄えているのだろうか。命の不思議さ。幼虫として土から出て、地上を這い歩き、しがみつく壁や葉っぱに上り、孵化して蝉になる。命の鎖のつながりは一度始まったら前に戻ることが出来ない。あの早朝の蝉も庭のどこかで声を張り上げているにちがいない。いい夏を。
 昨日は外出の予定があったのだがお昼過ぎのいちばん暑い時間に外に出るのが億劫になり、電話でキャンセルした。外に出るだけで汗が吹き出す炎天下の中、なにも外に行くことはないとも思った。
 今日も外出する気になれず、老犬ももこと家で過ごす。ももこは早朝4時半ごろ、外に出て少しだけ歩き、用をたした。上空にお月様が見えた。朝ごはんを食べて7時過ぎにトイレのために外へ。すぐ家に戻った。お昼前までは起きていたがその後は冷房のきいた居間で眠っている、眠る前にトイレのために外に行こうと促したがももこは嫌がった。それではと眠っているももこのお尻の下にトイレシートを敷いた。シートを見ていると、おしっこの染みが最初は小さいがだんだん大きくなってきた。お尻の下からシートを抜くとたっぷりと吸い込んで重たい。新しいのと替えてもももこは眠っている。
 この暑いのに何回もトイレのために外に出すのも可哀そうかなと眠っているももこを見て思った。
 ももこの前の飼い主さんはももこのことを思い出すことがあるのだろうか。多分10年以上、同じ家にいたのだろう。もし、何かの事情でももこを飼えなくなったにしても、また、ももこが自分で何かの拍子に家から離れ帰れなくなったにしても、時には思い出すこともあるのではないか。ももこのことを思い出してほしい。10年以上もいっしょにいた家族に思い出してもらえないとしたら、ももこが可哀そうだから。ももこは前住んでいた家を、家族を忘れていない。


東京は今日も猛暑日〈最高気温が35℃以上)
夕方になっても暑さがそのまま続いている
空気が湿気を含んで重たく、息苦しいほど
涼しげな花壇の花を2点アップロード