少しずつお互いに慣れてきた

 春の陽気になり、日中は外出時にコートがいらなくなった。午後から医療保険の相談に行く予定があったが、約束の時間を1時間遅く勘違いしてしまった。時間を過ぎて気づき、慌てて電話をして急いで伺うと伝えた。電車で行くと時間がかかるので車で行った。医療保険は保障額が少なくなるが、掛け捨ての金額を抑えたものを申し込んだ。ただ、5年弱前に家で父親の介護をしていたときに、積み重なるストレスが原因だと思うが、朝目覚めて強いめまいに襲われ起き上がれなくなったった。このことが審査でどう判断されるかわからないといわれた。
 2時間以上かかり、スーパーマーケットで少し買い物をして家に帰ったのは5時半ごろ。玄関のドアを開けると,灯りを消し忘れたトイレの前に老犬のももこさんが立っていた。出かける前は庭に面した広縁に敷いたわんこ用のベッド(もとは亡き柴犬レオが使っていた)で気持ちよさそうに眠っていたが、起きてわたしがいないので、トイレにいると思ったのかもしれない。ももこと声をかけると、振り向いてこちらに歩いてきた。
 ももこさんはお互いの相性を見るトライアル中の保護犬である。最初の日はわたしの一挙手一投足を見ている状態で、眠っていてもわたしが立ち上がると目を覚ますので、昼間はほとんど眠っていなかった。また、部屋から部屋へと歩いて落ち着かなかった。2日目、3日目となるにつれて、だんだん慣れてきたというか、信頼の感情が芽生えてきたというか。今日は別の部屋でお互いの顔を見えない状態で過ごしたり、わたしが午後外出のために玄関のドアを開け閉めしても目を覚まさなかった。昼間、安心して眠っているももこさんを見るのはわたしにとっても安らぐことだ。
 父母と柴犬レオと暮してきた家族の歴史、ひとりひとりと家族が少なくなった時の流れ、わたしは喪失の辛さにいつのまにかがんじがらめになった。ももこさんはかすかな希望でもある。
 今日も写真が撮れなかった。庭は春全開に向けて歩みを速めている。移り変わる花や木々の表情を明日は撮ってみたい。