初冬の庭を見ていたら、柴犬レオを思い出した

 満天星躑躅ドウダンツツジ)の葉が鮮やかに紅葉し、他に彩りといえば黄色い実の千両、ピンク色の薔薇がちらほら咲くだけ。
 落葉樹の梅や桃はほとんどの葉を落とし、スモモの葉はまだ残っている
 花壇には冬越しのために植え替えた花苗や小さな苗が寒い季節に備えるかのようにどこか縮こまって見える。
 2013年に他界した柴犬レオがまだ家にいた頃、レオにとっての最後の5月。レオは庭の通路で眠っていて、わたしはレオをときどき見ながら花壇に夏に向けての花苗を植え替えていた。あのとき植えたイングリッシュラベンダーやベロニカがもう花壇にはないことをあらためて思い、植えた辺りを目で追った。
 庭の通路にあのときのレオがまだいるような気持ちが湧き上がってきた。通路を歩くにもレオが眠っていたところを避けて歩いた。そうやってレオがいるかのように振る舞うとますますレオがいるような気になる。寒くなったから中に入ろうと心の中で声をかけた。
 玄関の戸を開けると老犬ももこが迎えてくれた。わたしのごはん、まだ?という催促かもしれない。ももこの姿を見てもすぐには現実に戻れず、台所に行き、ももこのためのお粥を炊く準備をしているうちにいつもの日常に戻った。