遠ざかる蝉の声

 昨日は一日中、庭から蝉の声が聞こえなかった。夜になると、庭ではコオロギが大合唱をはじめ、窓を開けると部屋の中まで鳴き声が入り込んできた。コオロギの声が明かりのついていない部屋で見えるような感じがした。
 今日は曇り空で昨日より気温が上がらないが、庭でミンミン蝉が突然鳴き始めた。その声は真夏のような力強さはなく、鳴き声は長く続かなかった。蝉の声がパタッと止まった後の庭の寂しさ。じりじり照りつける日差しがいつまで続くのかと思っていた夏の日の、圧倒的な力で鳴く蝉たちの声。時にはうるさく感じた。その声が響かなくなった庭はがらんとしている。思い返せは、油蝉とミンミン蝉の合唱にいつのまにかツクツクボウシの声が交じり、だんだん多くなってきたのが季節の変わり目だった。
 季節の真っ最中にいると、いつまでも続くように思えるがいつの間にか終わっている。冬から春へ変わるときもそうだった。

夏の末ミンミン蝉が短く鳴き後の庭には静けさ残す
開け放つ夜の窓よりコオロギの声があふれて入り来る

 

裏庭に植えた10年来の秋海棠(しゅうかいどう〉の花が咲き始めた