木槿(むくげ)の花

 昨日初めてミーンミーン蝉が鳴いているのを聞いた。台所で聞いたので急いで庭に面した部屋に行って,どこで鳴いているのか確かめようと思ったが、ミーンミーンが尻すぼみになり、じじじーと鳴いてぱたっと途絶えた。その後は鳴かなかったが夏の始まりが耳に印象付けられた。
 今日は東京も梅雨明けとなり、朝から晴れて、庭の木槿の花がわたしたちの季節が来たといわんばかりに咲いている。花が開いて数日しか咲かない短命の花だが枝を伸ばしながら次から次へと夏の間咲き続ける。見方によってはたくましい花ともいえる。
 庭には10数本の木槿の木が植えられているが、2種類の花しかない。淡いピンクの花の底が濃い牡丹色のと、真っ白な花の2種類である。亡き父がどこからか手に入れた2種類の木槿がこぼれ種で増え、さし木もして父が育ててきたのだろう。
 木槿の花は柴犬レオと過ごした夏の日々を思い出させてくれる。あの夏の日の陽射しの強さ、地面に揺れる木の葉の影、ぎらつく夏の青い空と力強い雲たち、口を半開きにしたレオの暑苦しさにあえぐ表情・・・・・・。なんで過ぎ去った日々はこんなにも輝いて見えるのだろう。こんな思いを詠った短歌が最近読んだ歌集の中におさめられていた。この歌を読んで、胸を突かれ、本を閉じた。レオと過ごした最後の夏、2012年の夏はレオが亡くなり時間が過ぎるほど輝きを増していくような気がする。
 レオがいた夏にも咲いていた木槿の絵を描いて、レオとの思い出に手向けることにした。


鉛筆でスケッチして、水彩色絵具で彩色
木槿の花びらの薄さ、透明感をを表すために
輪郭をあえて強調しなかった