梅が咲いた

 今朝も冷え込みは強い。桃の木の下の土も霜で持ち上がっている。メダカの水がめは防寒対策の効果で氷が張らず、昨夕やった餌も無くなっていて、ひと安心した。
 自室の窓から冬枯れの庭を眺めているうちに、在りし日の柴犬レオが庭で走り回ったり(犬の認知症の初期は興奮状態になるとかえって元気になる)庭の通路を尻尾を下げてとぼとぼ歩いたり、植木鉢の陰にうずくまったりした晩年の数年間が現在の庭に重なり、レオの不在が胸に突き刺さった。顔をくしゃくしゃにして泣いた後、しばらく音もなく涙が出た。自室のもう一つの窓(こちらは吹き出し)を開けると、目の前の紅梅の木に、花が数輪咲いていた。今年も紅梅が咲くころになった。紅い花を見て、涙がすっと引いていくのがわかった。
 この紅梅は実梅ではないのに、昨年たくさん梅の実を付けたので、今年は花つきが悪いだろうと思っていたがその通りになった。それでもいつもの通り咲いてくれるとうれしい。
 午前中はなぜかレオの幻が目にちらつき、心が落ち込んだ。11時ころになり、やっとこんなことではいけないと庭に出て、体を動かした。駐車場のわきに植えた実のなる梅の木(花はあわいピンク)の枝を高枝鋏で整えた。空に向かって真っすぐ伸びている太い枝を短く切り詰めた。細い枝がたくさん出ている太い枝はそのままにした。細い枝には小さなつぼみがぎっしりとついているから。
 ついでに夾竹桃の気になる枝を鋸で切り落とした。かなり太い枝。このまま夏を迎えると邪魔になりそうな枝とずっと思っていた。切った梅の枝を拾い集めゴミ袋に捨て、何日か前に剪定した栗の木の枝を短く鋸で切り、ひもで束ねた。こうして体を動かしながらも、ときどきレオのことを考えた。今日はレオが頭から離れない日のようだ。
 今日は一年で最も寒いとされる大寒の日だが日中は比較的あたたかく、庭仕事でもしようかと思える陽気だった。


花数が少ないが紅梅が開花した


 昨日〈日曜)のことを少し書いておく。昨日も午前中はシャキッとしなかったが、なんとか気持ちを立て直して11時からBS日テレ大島渚監督の「忘れられた皇軍」を観た。beatjwさんのブログでこのドキュメンタリーフィルムのことを知り、見たいと思っていた。日本国の軍人として太平洋戦争で戦った在日韓国人の兵士たちが、日本政府に対して補償を求めてデモをする姿を追っている。片腕を失い、視力を失った元兵士にカメラは可逆的なほど接近する。黒いサングラスをかけ、口を引き結ぶ顔のクローズアップが印象に残る。サングラスの下には固く閉じられた見えない目があり、兵士が泣く場面は衝撃的だった。
 映画監督の是枝裕和氏は、大島監督がこのドキュメンタリーで糾弾したかったのは、日本人が持っている被害者意識だと言った。多分〈想像するだけだが)、おおかたの人は被害者意識とも加害者意識とも無縁ではないかと思う。
 午後は中野サンプラザで、動物飼養に関するセミナーに参加した。柴犬レオがまだ若い頃、犬と暮らすために知っておきたいことを学ぶために、愛玩動物飼養管理士の試験を受け、2級の資格を得た。学んだ知識がどれほどレオとの生活に役立ったかはわからない。資格を持続するためには年間いくらか支払う必要があり、3年分の登録料を支払った。レオがいなくなり、必要がない資格かもしれないが、そう思うことが寂しく感じ、継続したのである。セミナーの内容は、「東京都における動物行政の取り組みについて」と「人と動物が幸せに暮らすために 犬・猫の食事」。
 東京都では捨てられた犬猫を新しい飼い主に譲渡する取り組みを進めており、犬に関してはかなりの数の犬が殺処分されることなく新しい家族のもとで暮らすことができるが、猫は処分される数が多いことがわかった。それも子猫が多い。もちろん、保護された犬もすべての犬が譲渡の対象になるわけでなく、特に高齢の犬は新しい家族が見つからないようだ。
 犬・猫の食事は、犬と猫が必要とする栄養の違いが興味深かった。犬は人間と暮らす長い歳月を経て、人の食べ物を取り入れ雑食動物化したが、猫は断固として肉食動物である。犬は甘いものが好きでチョコレートも好むが絶対やってはいけない。キシリトールが入ったガムも食べると重度の低血糖症を起こすので、絶対ダメ。

昨日の帰りに撮影した
遠くに小さく富士山が見える
夜景なのでピンボケ