今日は明治神宮の歌会へ

 今年最後の歌会が今日、明治神宮社務所で開かれた。講師は岡野弘彦先生。折口信夫氏に師事された歌人であり、国文学者でもあり、今年の文化功労者に選ばれている。
 今日のお題は明日の天皇誕生日に因んだわけではないが、「誕生日」である。参加者が作品を提出した後、岡野先生による講話を拝聴した。学生時代、特攻を志願したが終戦により果たせず、ただ同期の仲間は命を落としたものも多く、鎮魂の思いが消えたことはないとのこと。日本は明治時代以降、いくつかの戦争を行ってきたが近隣のアジア諸国との現在の軋轢はその戦争がもたらしものといえる。ただ、これからの日本は近隣アジア諸国に対抗するために軍備競争に舵をとることなく、近代以前、特に古代におけるアジアと日本の関係に目を向け、お互いに影響を与えあい、お互いが得るものが多かった関係性を研究し、現在と未来に生かすべきだ。ここで書いた内容はメモを取ることなく記憶に基づいて記したもので、先生の真意からそんなに遠くはないと思うが、わたしの理解が届かないところもあるかもしれない。
講話の後、参加者の作品の選出と講評があった。誕生日というお題がよかったためか全体的にいい歌が多かったとのこと。ただ、事柄を言うのに手いっぱいになって、事柄で終わり、作者の気持ちが読めていない作品が多いとも言われた。「作者の心が大切」「事柄の報告は短歌ではない」「感動まで行かずに終わってしまう短歌が多くなった」これはかなり熟練した歌い手にも多いそうだ。
 わたしは事柄を伝える技にも乏しく、心を表わすのはさらに大変というレベルだが、心して歌をつくろう。

 「冬空に白木蓮(はくもくれん)のつぼみ固し今日は亡き母の誕生日」
 「老犬がひとり逝く日は誕生日に贈りし首輪で飾りやりたり」


 歌会の帰り、渋谷区中央図書館に足を伸ばした。JR原宿駅前から竹下通りへと歩き、クレープ屋さんが2軒並んでいる間を入ると東郷神社にたどりつくが、その近くにある。登録をすませ、短歌の本を3冊借りた。一冊は平岩米吉氏の「犬の歌」で、もういちど読み返したいから再度借りた。あと2冊は大岡信氏の「折々の歌」「続折々の歌」。
 本の貸し出しがカードのバーコードを読んで、端末でできるのには驚いた。いつも行く図書館は目黒区中央図書館だが貸出や返却の作業は人の手で行っている。こういう事務的な作業は機械にすべてまかせて、人間はもっと創造的な仕事に従事しようという考えなのだろうか。


朝の明治神宮
野鳥の鳴き声が響き、すがすがしい空気に包まれている