雨の日の別れ

 昨夜、老犬レオの亡きがらは、レオ愛用のベッドに横たわり、わたしはそのかたわらで一夜を過ごした。
 あまり眠れず、最後のレオの姿をスケッチした。鉛筆とサインペン、墨で、4枚。どれもあまり出来がよくなかった。サインペンでかいた2枚は破棄した。レオは動かず、いくらでもスケッチできるのだが、やはり寝がえりを打つレオのほうが描いていて熱がこもるようだ。
 明けて午前中に、レオを火葬にするため迎えの車が来た。弟は5分ほど遅れて家に着いた。葬儀社の人とわたしとで大きなダンボールにレオを抱いて入れ、ぬいぐるみやボール、庭からとってきた切り花をレオのまわりにちりばめた。紫陽花の花がいちばん多い。紫陽花の季節の別れだ。レオにはネクタイネックレスをつけてあげた。最初に作ったグリーンと濃紺のネックレス。16才の誕生日祝いに作ったブルーと赤色のネックレスはわたしが持っていることにした。
 死後硬直が一度ゆるみ、やわらかさが戻ったレオを何回もなでた。声をかけたが何を言ったか忘れてしまった。こんなふうになるなんて!
いつかはこうなると覚悟はしていたが、現実に起こるとまったく違う。
レオ、さよなら。雨の中、玄関から車までダンボールが移動した。弟とわたしは見送りに門扉のところまで行った。車に乗せられ、家から離れていくレオを車が見えなくなるまで見送った。
 葬儀社の人は急に蒸し暑くなったので、天候の変化についていけない高齢の犬猫や病気を持っている犬猫がこの週末に亡くなり、こみあうので火葬の日程が明日になるという。
 明日、弟は仕事で行けないのでわたしひとりだが火葬に立ち会うことにした。最初はレオを預けて火葬してもらい、遺骨だけを取りに行く予定だったが、家を去るレオのことを考えたら、立ち会わなければいけない気持ちになった。いや、どうしてもそうしたいと思った。
 心をこめて見送りたい。長い年月、家族同様に暮らしてきたレオだから。
 レオがいなくなった家で、ひとりいることの不思議さよ。どこかにいるような気がしてならない。今までなら姿は見えなくても、ちょっと移動すればそこにレオがいた。
ワンワンの声が聞こえないのも寂しい。ああしてわたしにいろいろな気持ち、要求を伝えてきたレオだから。

※2013年6月24日(月)加筆しました。レオの亡きがらを家から見送るとき、弟とわたしが立ち会ったので、そのことを書き加えました。最初の記事は弟のことを書いていませんでした。気持ちが高ぶっていたので、書き忘れのだと思います。


家を去るレオ

大輪のダリアもレオを見送った

犬歯が出ているレオの顔
ああ辛かったのだろうなと思い、切なかったが
最後だと思ってスケッチした
こういう絵を描いたことを残しておきたいので
アップロード