桜三昧


 昨日に比べ、あたたかく風のないお花見日和の一日。
 16歳になったばかりの老犬レオが朝ごはんを食べた後、眠りについてから、車で園芸用の薬剤を買いに行った。これから気温が上がると、桃の葉に縮葉病という葉が変色し縮れる病気が発生する。この病気は発生してからでは効く薬剤がないので、予防のための薬を早めに手に入れたかった。他にも薬を葉に定着する定着剤など2.3の買いものをした。
 帰りは土手の桜並木がきれいな道路をドライブした。丸子橋から二子玉川まで用事もないのにただ車を走らせた。昼間はバスが通るので車はそんな速度を出せず、桜を見るゆとりもある。次から次へと今が盛りと咲き誇る桜の大木が目の前に現れ、去っていく。満開の桜の木はまるで美しいオブジェのように見えた。わたしは桜の木にかしづかれる気分で、気持ちよく車を走らせる。道路は桜の花びらが舞い、ピンク色のカーペット。魔法にかけられたような時間だった。二子玉川に近づいたある時点で魔法がとけ、車のスピードをあげた。
 家に帰ってから、魔法の余韻が残っていたのか、レオがまだ眠っているのを確認してから、こんどは歩いてお花見にでかけた。
 多摩川を見降ろす高台にある公園で、こどもの頃は学校の帰り、ブランコに乗りに寄ったりした。亡き母はまだ自分だけで歩けるときは、桜の季節に友人とよくお花見にでかけていたし、わたしも母と憶えているだけで2回、お花見に行った。
 行きの道もところどころに桜並木があり、薄青い春の空を背景に、丸くまとまって咲いているソメイヨシノの花を見上げた。車ではこういう楽しみ方はできない。
 公園には地面にシートを敷いて、お花見を楽しむ人たち、ゆっくり散策しながら花を愛でる人たち、犬の散歩に来ている人もいた。数年前まではレオといっしょにお花見に来た公園でもある。あまりの満開の桜が見事なためか、、感傷にひたることはなかった。ただ、帰り途は22年くらい前に母と花見に来た時、帰りに歩いた同じ道を歩いて帰った。同じ道でも両側に建っている家々は当時と同じ家は少なく変わっているし、なによりも川向こうに見える風景が全く変わっていた。数軒、当時と同じと思われる古い家があり、立ち止まって眺めた。

赤い橋の上でレオと写真を撮ったこともある