ちょっと外出

 父の郷里から届いたお香料のお返しを送ろうと思い、午後車ででかけた。
 老犬レオは居間の掘りごたつのところに寝ている。2回ほど、炬燵の中に落ちたことがあるので、わたしの留守中にそれだけは避けたいとと思った。暗い中に落っこちて、数時間過ごすのは老犬には負担が大き過ぎる。
 これなら落ちないだろうと、座布団を、こたつ布団の上に置くことにした。4枚の座布団を布団の上に置くと、座布団の重みでこたつ布団がめくれることなく、レオがばたばたしても落ちないはずだ。
 これで大丈夫とでかけたが、思わぬところを見逃していた、これは後で話そう。
 二子玉川高島屋で、お返しの品を選び、前日書いた手紙をそれぞれに同封するよう係の人に渡した。父の郷里は数日前、震度5強の地震がおきた栃木県北部にある温泉地だ。TVでは、その温泉地に被害があるというニュースは見なかったが、手紙の中で無事かどうかをたずねた。いつか父の郷里を訪れたいという気持ちも伝えた。
 用をすませ、デパートの中にある絵画の展示販売コーナーで足をとめた。ベネチアフィレンツェなどヨーロッパの中世の面影を色濃く残す街を描いた絵が何点も展示されていた。よく観ると水彩画ではなく、銅版画に水彩で色づけしたものだ。原画の水彩画も展示されていて、こちらのほうが線がやわらかく好みだったが価格は高い。
 この繊細なタッチの絵に影響されたのだろうか。
 文具店の伊東屋に立ち寄り、小さいサイズのスケッチブックとドローイングペンを数本買った。絵の道具についてまったく知識がなく、絵画用のドローイングペンとというものがあるのをはじめて知った。普通のサインペンで描くものと思っていたのだ。ドローイングペンは絵画用のサインペンで、線幅が0,03ミリと極細もある。インクがなめらかに出て描きやすい。
 今までは、インクがなめらかに出なくて、かすれたり、途切れたり・・・・・描いていてイライラした。このペンなら、そういうことはなさそうだ。
 さて、家に帰るとレオは掘りごたつに落ちてはいなかった。ただ、レオのかたわらに置いていた新聞がばらばらになっていて、湿っていた。新聞紙の上でレオは足を滑らして、倒れたれり起きようともがいているうちに、おしっこをしたようだ。カーペットが濡れていなかったのはよかったが、でかけるとき新聞を床に置いていくのはやめようと思った。ちなみにレオは液晶テレビの台と壁の間のすきまに顔をつっこんで寝ていた。この隙間には奥に入らないように、たたんだ古いシーツをつめてある。