友とランチ

 風邪気味で冷たい雨が降っているが、思い切ってでかけた。昨夜、電話があった友だちにこちらから電話したところ、ランチを誘われた。風邪を理由にことわると、あと何カ月も会えない気がした。
 駅前の、何回か入ったことがある店でスパゲッティのランチを頼んだ。友だちは連休前に、心房細動をおこして救急車で入院した経緯があり、医師からカフェインが入った飲み物やアルコールを止められていた。紅茶やコーヒーは飲めない。
 今はふつうに生活しているというが、久しぶりに会った友はなんとなくけだるそうな雰囲気になっていた。医師に処方された毎朝飲む薬が、精神安定剤のような作用もあるようだ。積もる話はいろいろあったが、やはり、話は病気のことに。心房細動は命にかかわる病気だ。発病する前は眠れない状態が続いていたらしい。眠る時間がないのではなく、眠る時間に眠ろうとしても眠れなかった。わたしにも身に覚えがあるので、友だちがそういう状態にまで自分を追い込んでしまったことに痛ましい思いがした。
 友にいわせると、昨年夏、彼女のご両親が飼っていた飼い猫が交通事故で死んだことがショックで、そのことが今回の病気につながったようだ。
 ご両親からの電話で飼い猫の様子を見に行くと、猫は出血しており、一目で事故にあったとわかったので、これからお医者さんのところに行こうね、と話しかけると、ニャオと返事した。抱いたまま歩いていちばん近くの動物病院まで行ったが、行きはまだ息があったのに、着いてすぐ息を引き取ったようだ。友だちが来るのを待っていたような猫の様子と、さっきまで生きていた猫が腕の中で息を引き取った、そのはかない命に、友だちははかりしれないショックを受けたようだ。
 わたしは自分のこともいろいろ話した。父親の介護のこと。そのときに精神的に追い詰められ、うつ状態になったことなど。いまだから話せることだ。渦中にあるときはなかなか友達にも話せない。あのときは父の介護により、夜眠れないときが続くなど、ストレスと疲労、閉塞感がめまいの原因かもしれないことなどを医師に話した。
 ただ、いろいろなやりとりの中で、少しずつでも話せればストレスが少しでも解消できるかもしれない。話を聞いてくれるだけでもかなりラクになることがある。こうしてランチしたり、電話したり、もっと話せるようになれればいい。

 老犬レオはわたしの外出中、あちこち歩き回った形跡はあるが、帰った時は眠っていた。目を開けてわたしがいることを確認すると、また横になった。今日は一度も発作を起こすことなく、朝夕の食餌もぜんぶ食べた。
 台所の椅子の下に入ってひっくり返そうとするレオを抱き上げて、「いい子だから、この下に入らないでね。本当にレオはいい子だねえ」などとほめちぎると、うれしそうな顔をして笑った。笑うレオを見るのは久しぶり。また椅子の下に入ったので、同じように抱いて、同じようにほめた。レオはかまってほしいのかな。