カルガモ・チェース

 連休明けの月曜日、老犬レオはやはり、朝寝起きに口をぱくぱく動かし、苦しそうにする発作を起こした。こちらも少し慣れて、レオをトイレシートを敷いた廊下の隅に抱いて行き、そこで体を抱いて、顎のあたりをさすってあげた。おさまるまでずっとそばにいた。声をかけた。そばにいるから大丈夫よと何回も。おさまりかけてから、トイレシートにおしっこをした。ここでやって、いい子だね、とほめた。
 さらに落ち着いてから、水を飲まし、様子を見て、外に連れ出した。家の前の道路でまたおしっこをした後、抱いて、いつもの用水路沿いのサクラの木の下まで連れて行った。ここは木陰になるし、風があるから、暑くないだろうと思った。リードをはずし、自由にさせた後、川を眺めた。このあたりを縄張りとするカルガモのつがいが泳いでいるが、そこに一羽の別のカルガモが泳いできたらしい。つがいの片方(多分、オス)がすごい勢いで追いかけている。激しい水音が聞こえてきそうだ。逃げ切れなくなったカルガモがついに飛び立ったが、そのすぐ後ろをつがいのオスが追いかけて飛び立つ。わたしの目の前を二羽が飛んで行った。しっつこく追いかけ、2羽は空の方向に飛び去った。絶対、ここには来させないぞ、というつがいのオスの迫力に、追いかけられていないわたしもたじろくほどだ。
 ほどなくして(1〜2分)、オスが帰ってきた。水辺に降り立つと、争いの場から離れたところにいたメスがすーっと近寄ってきて、2羽はなにごともなかったように並んで泳ぎ出した。他のオスに対しては戦うオスだが、つがいの片割れに対しては、やさしいナイトのオスとなった。カルガモの愛と戦いの日々。こんなタイトルをつけたいような一幕だった。
 このあたりの水辺は、このカルガモカップルと、羽が破けて飛べないカラス、羽が傷ついて渡りができなくなり、群れを離れたマガモが生活の場としていて、三様の生態を見せてくれる。飛べないマガモは、一羽の寂しさもあるのかカルガモカップルに関心を示すが、カルガモは相手にしない。他のカルガモのオスに対するような徹底抗戦もしない。恋のライバルになりえないから。