初夏の渓谷へ

 家から歩いて行けるところに小さな渓谷がある。その上にはお不動さまがあり、老犬のレオが元気な頃はよくいっしょに行ったものだ。
 今日は寝ているレオを残して、1人で散策に出た。レオとのいつもの散歩コースである、用水路の上流にあるので、川沿いを歩けばたどりつく。途中、お墓参りに寄ったので、住宅街から川沿いへ。このあたりはまだ畑が残っており、民家の入口にその家で収穫したミズナやロケット菜などが並べて売っていた。
 さらに上流に行くと、用水路に注ぐ小さな川があり、その川を上ると(といっても150mくらい)、渓谷の入口がある。その入口の右手にお不動さまの境内に続く道があり、まずお不動さまの方に足を向けた。新緑のトンネルが続く道をゆくと、弁天様が祀られ、このあたりはサクラもきれいだし、カエデの新緑が光を透してきらきら輝いている。
 階段を上がると、不動さまの建物があり、ここでレオのお守りを買い、自分におみくじをひいた。ドキッ。あまり良くない。思いつきで何かをやると、よくないと書いてある。熟慮を重ねて事にあたりなさいとある。心して承りました。境内におみくじを結んで、お参りをした。お参りをしてから、おみくじを買えばよかったかも。
 急な長い石段を下りて渓谷へ。降りたところの右手に小さな滝があり、ここで冬に滝打ちの修行をしているのを見たことがある。左手には甘いものやお茶を出す茶店やある。川沿いを歩いて、渓谷の上流に向かうが途中で引き返す。レオが気になって、あまりのんびりと散策を楽しむ気にはなれない。この渓谷もレオをよく歩いた。レオはここから長い階段を上ったところにある公園まで足を伸ばし、ウサギ小屋で、ウサギを見ているのが大好きだった。
 今日は引き返し、お不動さまの向かいの山に造られた日本庭園を見に行った。ここはもとは渓谷の段差を利用した日本庭園に個人の邸宅が建っていたが、個人で所有・管理するのは大変なので区に寄贈したか、管理を委託しているか、らしい。ここは比較的新しく公開された(といっても7年前くらい)日本庭園だが、レオやその友だち犬とときどき遊びに来た。石の階段が多いが、元気なときのレオは駆け上っていたのだ。
 渓谷から階段を上っていくと、書院造の建物があり、休憩できるようになっている。イロハモミジが何本か植えてあり、若葉が茂り、木陰を作っている。このモミジの実生苗を6年ほど前に2苗持ちかえり、盆栽にしようと育てたがそのうち1苗が成長して、今年になってやっと形ができ、若葉が目を楽しませてくれる。 レオと来た、以前の散歩コースを歩きながら考えた。わたしがレオの散歩のお伴をしたのでなく、レオがわたしの行きたいところに一緒に来てくれたのだ。お疲れさま、レオ、といいたくなった。家路を急いだ。

新緑の中のお不動さま


日中でもひんやりする等々力渓谷


シャガが群れ咲く日本庭園


日本庭園の上からお不動さまの方を眺める


孟宗竹の竹林がある