ケヤキが消えた!

 朝9時半ごろ、いつもの愛犬レオの散歩にでかけたら、道路わきに立つケヤキの伐採の最中だった。レオと歩きながら、うるさい音が聞こえるのでそちらを見たら、トラックからはしごのようなものを伸ばし、高い所の枝から切っていた。かたわらに建っていた一階建ての一軒家もきれいに取り除かれていた。更地にして、新たな宅地となるのだろう。思えばこのケヤキの木を他の木と違う目で見るようになったのは8年くらい前、レオの友だち犬と散歩しているとき、その飼い主さんがケヤキを見て「いい木だね、この傷跡がなければもっといいが」と言った時からだった。そのとき、はじめて身近にこんな立派な木があることに気付いた。この界隈にはケヤキの木が多いが、住居の敷地内にある木が多くて、こんなに近く、太い幹に手を触れようと思えば手が触れられるところに立つ木はあまりない。この先に、一本、道路に面して立つ立派なケヤキがあるがその木は雷に打たれたような傷はない。やはり、半面に大きな傷跡を持つケヤキは特別なものだった。少し前まではここにあるのが当たり前だったのに、こんなに早くなくなってしまうとは!
 ただ、カンみたいなものが働いたのかおととしの秋ごろから、今までになく、このケヤキとそばに立つ家が気になり、写真もかなり撮った。夜の散歩では家から漏れる明かりを見て安心したこともあった。この木の下で、時折、レオはこの家で飼っているパピヨンにじゃれつかれたり、わたしは飼い主さんと言葉をかわしたりした。その犬は犬なつっこい性格で、外を散歩している犬を見ると、近づいてあいさつをしたがった。この木とこの家とここに住んでいた人たちと犬に、ありがとう、さよならと言いたい。