「陽だまりの彼女」を読む

 ○マゾンに注文した「陽だまりの彼女」は、前代未聞の落丁本が送られてきたので、新しい本を送るように請求し、昨日届いた。
生まれて初めて見るようなひどい製本の本で、しおりのようにページの切れ端が2枚挟まっていたのを見たときは、これは新しいスタイルの製本なのか!と一瞬思い、そんなことはないと思いなおした。こんな本が市中に出回るのは、本の衰退を象徴しているようにも思え、寂しい感じもしたのである。
 某新聞に掲載の、想像力をかきたてる書評を読んで買おうと思った本だが、本がなかなか手元に届かなかったため、「ラストには大きな驚きが待っている」(書評より)について、あれこれ考えてしまった。そして、ある結末と言うか、ある設定のラブストーリーがひらめいた。こうして、こういう結末かもしれないと思い当ったスト―リーを頭の隅に置きながらの、少し変わった、一面では小説中のさまざまなエピソード、ディテールに敏感に反応しながらの、スリリングな読書になった。
 26歳の交通広告代理店に勤める営業マンの奥田浩介と、取引先のランジェリーメーカーで再会した中学時代の同級生だった渡来真緒との、いわゆる幼なじみの恋物語である。再会した二人はとんとん拍子の早さで結ばれ、結婚を意識するようになるが真緒の両親に反対され、駆け落ちして結婚する。いくつか、物語の進展とほとんど関係なく見えるのに、すごく細部にこだわった描写がある。例えば、動物好きの浩介が中学時代、下校の途中で真緒とよく立ち寄っていた公園で、ひろった捨て猫の話。テンポのいいストーリー運びの随所に、ひっかかる描写やエピソードがあり、これは「大きな驚き」へと結びついている。読み進むうちに、パズルのかけらが集まり、ある像を結び始めるときがあり、サスペンスの要素もある。ちなみにわたしの中のパズルがピタッとはまったのは、新婚生活を送る二人が飼い始めた金魚の一種、リュウ金が水槽からいなくなった出来事からだ。
 読む前に思い描いた結末、スト―リーと、実際の結末、ストーリーは同じだったのだろうか。あえて言えば、まったくはずれでないし、完全に一致もしていない。あれこれ想像した中で、2つのストーリーを思い描いたが、そのうちの一方だったのである。
 愛犬レオとわたしの生活。若いころのレオはどこにでもお伴をしてくれる忠実なボーイフレンドのようだったが、今は介護を必要とする老犬になってしまった。でも感謝の気持ちを持ちながら、ともに暮らしている。