鳥たちに負けずに柿を取る


午前中、庭から鳥たちのさわがしい鳴き声が聞こえる。ムクドリくらいの大きさの鳥が柿の木にとまり、盛んに柿をつっついているのが見えた。
あまりのんびりしているとぜんぶ鳥に食われてしまう、といそいで庭に出て、脚立と長く伸びる剪定バサミを用意した。人の気配に食べるのに夢中だった鳥があわただしく枝を離れた。
柿の木は伸び過ぎるほど高く伸びているので、上の方の柿は鳥たちにくれてやるしかない。上の柿ほど、太陽の光をじゅうぶんに浴びるから、実も大きく赤く熟するのが早い。だがさすがに柿の木は枝がポキッと折れると聞いているので木登りする気はまったくなく、あきらめるしかない。
できるだけ高い処の柿を取ろうと、剪定バサミを持って脚立に登った。重い剪定バサミを持って脚立に登るのはひと苦労だが、思ったよりスムーズに柿が取れた。
去年はこんなにスムーズではなかったが〜〜〜〜〜
最近、必要に迫られて高い庭木の剪定をするようになったし、浴室の壁や天井のペンキを塗るなど、比較的高い場所での作業に慣れてきたのかもしれない。
届く範囲内で熟しかけた柿をぜんぶ取ることができた。見るからにおいしそうに熟した柿は鳥がついばんでしまい、見当たらないのだ。
柿が赤くなりかけても取るのがおっくうで眺めるだけだったが、鳥たちがやってきて柿を食べ始めると、負けてられないというわけではないが、鳥たちだけに食べさせるのが惜しくなって、重い腰をあげたのであった。
この柿の木はこの秋の、風が猛烈な台風が来た時、高く伸びた幹や枝を強風にあおられ続けた。台風一過、様子を見に行ったら根元に地割れができていた。見た目も頭でっかちな柿の木。広げた枝すべてで激しい風を受け、それに耐えたが根元を脅かすまでの衝撃だったのだ。
太い幹に手をかけ、「よくがんばったね。大変だったね」と心の中で声をかけたのを覚えている。