水浴びに来る生き物たち


わたしの部屋から見えるところに、直径40センチくらいの水をはったカメが置いてあり、メダカが5〜6匹泳いでいる。
この水盤にはいろいろな生き物たちが訪れる。真冬は氷が張ることも多いのでさすがに訪問者はいないが、春先、まだ桃の花も咲かないころに、名前はわからないがハトよりは小さく、小鳥というには大きい、こげ茶色の鳥が訪れる。水盤の中に、バシャッと水音が聞こえそうなくらい勢いよくダイビングし、豪快に身震いする。水がカメのふちから10センチくらい跳ね飛ばされる感じだ。この鳥の水浴ぶりを見て、わたしは父の入浴姿を思い出した。体調を崩して、往診の医者や訪問看護師に診てもらうようになってからは(不安だから)浴室の戸をあけていたので、ざぶんと湯船に入る父を何回か見た。その勢いが鳥と良く似ているのだ。ああやって自分でお風呂に入れるころはまだ良かったな。そんな思いがよぎった。
あたたかくなると、ヘビがやってくる。人差し指ほどの太さ、黒っぽい色の小型ヘビだが水浴びだけでなく、メダカを襲うことがよくある。水面の藻などに隠れるようにしてじっと浮かんでいて、知らずに泳いでいるメダカを狙っている。追い払おうと棒でカメをたたくと、逃げることもあるが、小さな鎌首をもたげ威嚇してきたこともあった。このヘビがいるおかげで、毎年、メダカを卵から孵化して増やしてやらないといつのまにかゼロになってしまう。
蜂も来るし、蚊も来る。近所の猫が水を飲んでいるのを見かけたこともある。
つい最近は、部屋の中から眺めていたら、渋い緑色(鶯色というのか)のメジロがやってきて、水浴びをした。目のまわりが白いからメジロだと思うが、キョトキョトした目つきが愛らしい。臆病で用心深いのだ。わたしは1メートルと少し離れた部屋の中からアルミサッシの戸とガラス障子の2枚越しに観察していた。わたしの気配は伝わらないと思うが、メジロは何かを察しているふうでもある。少しでも身動きしたら飛び去りそうだった。ガラス越しにでも写真を撮ろうとデジカメに手を伸ばし、かまえようとしたら、盛んにキョロキョロして飛び去った。