国立近代美術館に「鏑木清方展」を見に行く

 暑くもなく寒くもない、気持ちのいい五月晴れの一日。

 昨日予約した「鏑木清方展」に行った。

 東京メトロ東西線竹橋駅で下車して歩いて数分ほど。お堀にかけられた橋を渡り、すぐのところだ。

 1時半の予約だがすでに多くの人が入場を待っていた。展示会場はコロナ禍後に行った展示会のなかではいちばん混みあっている。コロナウィルスにより行われていた行動制限がようやくゆるんできた。手指の消毒、体温測定があり、マスクはもちろん着用する。

 いくつかのテーマにわかれ展示されている。例えば第1章は「生活を描く」。第二章は「東京」、第三章は「物語を描く」・・・・・・・・。

 第1章では清方が24歳の時描いた「雛市」が印象深かった。雛人形を飾った店先に、裕福な令嬢と桃の枝の束ねたものを持った裸足の娘が描かれている。明治の東京ではこのような情景がよく見られたのだろうか。

 同じく第1章の「明治風俗十二か月」もよかった。6月の金魚屋の絵にはツバメが飛んでいる。「讃春」は第1章のなかの「特集1東京」というテーマに入っている絵で、関東大震災のあとにかけられた橋を背景に船で暮らす庶民を描いた絵と、お堀の石積みを背景にした女学生二人の絵で構成されている。船の暮らしに桜の枝を飾り、サイネリアの鉢植えがあるのが印象的だった。

 細かく書くと際限がないので、第二章の「物語をえがく」では、樋口一葉の小説「たけくらべ」のヒロイン、美登利を描いた「たけくらべの美登利」に心惹かれた。実は鏑木清方の絵を見に行きたいと思った理由のひとつに、樋口一葉が生きた時代である明治の生活の息づかいや情趣を感じとりたいという気持ちがあった。淡い恋の相手から贈られた水仙の造花を手にしている、島田に結った美登利が描かれている。

 わたしの母方の祖母は明治時代に東京の下町で生まれたので、鏑木清方の絵に若い祖母が生きた時代の東京を感じてみたかった。絵の中の東京に若い祖母を置いて見たかったのかもしれない。

 この展示会は前期と後期があったが、前期も見たかったと思った。

 帰りは国立近代美術館を出て、お堀に沿って九段下まで歩いた。東京メトロ半蔵門線と東急・田園都市線に乗り、二子玉川に行き、そこからいつものようにバスで帰った。

 

若き日の鏑木清方雛市の貧しき娘、富む娘描きき

 

水仙の造花持ちたる「たけくらべ」の美登利描きし鏑木清方

 

細やかに明治の暮らし絵に描きし鏑木清方回顧展見る

 

花の盛り過ぎしツツジを眺めつつ五月連休いつものバス乗る