東京ステーションギャラリーに行く

 昨日とは違い気温が上がらず(湿気はあるが)わりと過ごしやすい。
 5〜6年前からいつか一度は観たいと思っていた、いわさきちひろの展示会。今年は生誕100年にあたりJR東京駅にある東京ステーションギャラリーで「生誕100年いわさきちひろ、絵描きです。」展を開催中なので行った。
 運悪く山手線のうち回りが渋谷駅の信号機不具合で不通になり、しかたなく目黒から都営三田線と丸の内線を乗り継ぎ東京駅にたどりついた。
 ステーションギャラリーははじめてだがすぐ場所がわかった。平日のわりには混んでいた。
 いわさきちひろが影響を受けた画家やその作品なども展示され、戦後すぐの頃のまだいわさきらしさが開花していない作品から晩年のこれぞいわさきちひろという絵まで見応えがある。
 さまざまな技法を試みている、いわさきちひろ。何枚もの習作を経て完成作にいたるその過程も展示されている。パステルの荒い動きのある線を採用した絵も興味をひかれた。滲みにくい画用紙を用い、粘度の高い絵具を使って、かすれのある絵を描く・・・・・なんという名前の技法だったっけ。魚やくらげ、イカなど海の生き物を描くのにこの技法を用い、とてもいい感じ。
 いちばん魅かれたのはやはり、筆に水をたっぷりふくませ水彩色絵具を紙にたらしてぼかしで描いた絵。海をぼかして描いた絵はなんどでも見たくなる。くだけた波が白くひろがるさまが見事に表現されている。
 戦争のなかのこどもたちを描いた絵もいい。「お母さんといっしょに燃えるぼうや」ということばが書かれた空襲で燃える親子の絵は母とこどもの表情の違いは胸にせまる。
 昨日は木登りをした木も丸焼けになった焼け野原に立ち尽くすこどもたち。幼い弟を背負って焦土を歩く姉・・・・・。ベトナムのこどもたちも描かれている。1974年に他界したいわさき氏の前年の作品だ。到達点といえるだろうがもっと先の絵を見たかった。

 水盤ゆ落ちる水らは池の面音たて乱し水に還る

 うす黄の睡蓮ひらくわれだけのためと思ひてしばしを眺む