初秋のおだやかな一日

 陽射しは強めだが湿気がないため過ごしやすい。秋の光が部屋の中にも庭にもあふれて、時間を遡るような感覚におそわれる。
 午前中は近くの特別支援学校に足を運び、いつものように珈琲を味わい売店では獅子唐を一袋買った。犬友だちが二人訪れ、ひとときのおしゃべりを楽しんだ。ひとりは美味しそうな梨を持ってきてくれた。その人はわたしの友だちにも米麹に獅子唐を刻み入れ、醤油や砂糖,みりんで味付けしたものをひと壜あげ、さらに学校の先生にも同じものをあげた。わたしは少し前にもらって冷奴にのせたりなして楽しんている。
 家に帰り庭を見渡すといろいろやりたいことがあると思ったが今日はのんびりしたい気分。 
 この秋はいつもより毛虫の発生が多い、奥庭の染井吉野、駐車場の後ろのすもも、樹齢半世紀以上の古木の梅にも毛虫がついた。見上げれば葉が食われている。地面を見るとむ毛虫の糞がたくさん落ちている。
 午前中には気がつかなかったものを駐車場に見つけてどきっとした。羽毛がわずかに残った骨。たぶん鳥の骨。始祖鳥の化石のような形をしている。蟻が最後の残り物にむらがっている。鴉だろうか。こんなことをするのは。大きさは雀より大きく鳩よりは全然小さい。骨だけではなんの鳥だかわからない。よく観察すればわかるかもしれないがじっと見ていると気分が悪くなりそう。
 鴉の群れがカルガモを襲って殺し、食い散らしているのを見たことがある。鴉のどう猛さは悪夢に近い。
 平和に見える庭でも命の終わりがあり、殺し合いがあり、生き延びる命がある。わたしだって、朝顔の葉を喰う虫を排水溝に捨てた。朝顔を救うためではあるが。

 昨日は夕方からご近所の家にお邪魔して飲んだり食べたり、話に花を咲かせた。親戚の人が菩提寺にお彼岸の墓参りに来てその方たちと隣家のご主人も加わり、にぎやかな飲み会となった。


 陰影のやさしく見ゆる日どこかで扉をたたく人をりたるや

 秋の陽あまねく満ちて亡き犬の眠りし廊下に追憶立ち上がる

 骨となりし鳥ころがりて殺戮の跡をさらせり秋の昼下がり

 鳥の死を清めるごとく黒き蟻むらがりてむくろに秋の陽さす